
総合物流企業「南総通運」(本社・東金市)が10日、創立80周年を迎えた。太平洋戦争中の誕生時から鉄道利用運送事業(通運事業)に始まり、戦後は復興に寄与。高度経済成長時代以降はトラック輸送で経済発展を支えた。平成時代前後から物流インフラとして県内外に倉庫を整備。商品の保管に加えて仕分けや値札付けなど流通加工業務も手掛け、経済を支えている。節目を迎え、今井利彦社長に同社の強みや展望、挑戦を続けてきた歴史などについて話を聞いた。
◆戦時下、11社統合で誕生
― 創立80周年おめでとうございます。御社の歴史について教えてください。
「1942(昭和17)年、外房地域の国鉄の駅から小口の届け先までトラック輸送を担う通運事業者11社が統合して誕生しました。車両12台、従業員95人の小さな組織でした。戦時下で、従業員に召集令状が届くなど大変な時代だったと聞いています」
「戦中、戦後の物流は鉄道がメインでした。戦時下の物流体制を整備して強化する国策の一環として全国の通運会社の合併が進められていたそうです」

「高度経済成長期に物流業界は大きな転機を迎えました。物流量の急激な増加を受け、鉄道輸送以外にもトラック輸送に注目が集まりました。弊社でもトラック輸送に力を入れ、地場産業品の輸送を多く手掛けました。昭和時代の終わりに、鉄道貨物輸送の拠点だった国鉄汐留駅(東京都港区)が廃止されたことが、物流の担い手がトラックに替わったと象徴しているように感じましたね。この時期から新しい物流インフラとして倉庫の整備を計画的に進めてきました」
◆多様なニーズに応え生産性向上
― 現在は、どのような事業を展開していますか?
「現在、延べ床面積約7万5千坪の倉庫、約370台の車両、約1200人の従業員を抱える組織に成長しました。創業地の千葉県を地盤に茨城、埼玉両県にも拠点を構え、中長期的な視野で関東全域への進出を視野に入れています。創立80周年を記念して茨城県龍ケ崎市に物流倉庫の建設を進めており、拠点も整備します」

「平成時代以降、商品の輸送、保管の枠を超え、オペレーション、商品の加工や箱入れ、値札付けなどの流通加工、工程管理などトータルでまとめ上げた物流サービスの需要が増しています。弊社では物流倉庫の運営などでノウハウを蓄積しており、国内企業のほとんどを占める中小企業の多様なニーズに応えられます。100社あれば100通りの物流のカタチがあります。お客さまの要望に耳を傾け、きめ細やかな最善のサービスを提案し、生産性を上げるための物流をデザインすることができます。小回りが利くコンパクトな組織で意思決定が早く、これまで個別の課題解決に力を注いできたことが弊社の強みです。大手物流会社が提供するフルパッケージサービスとの差別化にもなっています」

「高級輸入車を保管するオートモーティブ事業も手掛けています。船で千葉港に到着した車両をモータープールに陸送し、タイヤの空気圧やバッテリーのチェックといった納車前点検・整備も手掛けます。また輸入バイクへのETC等の取り付けもしています。普及する電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)に対応できるように準備も進めています。さらに昨今では、リース車両を一時的にお預かりするサービスも始めました。弊社は自社整備工場もあり、保管時に車検も実施させていただいております。また工場や倉庫で欠かすことのできない警備や清掃も事業化しており、物流の枠を超えてお客さまのニーズに応えていきます」
◆DX化で「見える化」「予測」
― デジタル化を推進していますね。
「20年ほど前から業務のデジタル化を進めてきました。トラックでは、デジタルタコグラフ導入に始まり、ドライブレコーダーを取り付けました。ドライバーには安全運転のルールがあり、最高速度や車間距離、車線のふらつきなど設定値に対し異常を検知すると、管理者のパソコンにデータが送信されて来ます。社内設定値を守り安全運転を継続したドライバーには毎月表彰する制度があり、安全運転の意識向上のほか、経済走行や事故防止に役立っています」
「今、お客さまに強く求められている物流は『見える化』『予測』という言葉で表現できます。例えば、弊社で保管する人気飲料の需要が増える時期に『製造予定数』『出荷予定数』を細かく『見える化』した上で、貨物の必要保管坪数を『予測』し、お客様の販売機会を失わぬよう、季節波動に対しても、最善を尽くさせていただいております。
今後の物流業界はますますDX化が進み、あらゆるプロセスが『見える化』されると思います」
「物流の『見える化』で言えば、現在のバーコード管理からほどなく電子タグに移ります。現在よりも情報が捉えやすくなり、さらなる変革が訪れるはずです。トータル物流業としてDX化を推進するには業務のペーパーレス化も必要です。 社員へのDX教育に加え、お客様へのご理解とご協力を得ながら、進めていきたいですね。
◆サービス向上へ人材育成に力
― 経営で大事にしていることはありますか。
「商品の輸送、保管、流通加工を手掛ける物流は無形のサービスです。サービスを向上させるには業務の最先端で活躍する社員がお客さまの目線に立ち、経営陣と同じスタンスで仕事をしてもらうことが不可欠でしょう。人材を育てるには合理性だけではいけません。仕事へのモチベーションを高めてもらうため、日頃から個人面談を通じて社員の意見を聞くなど信頼関係を築く取り組みを取り入れています。また、社員の家族を含めて人材を大事にしようと、誕生日の社員にはホールケーキを贈っています」
◆非常時も事業継続で社会貢献
― 地域貢献にも力をいれていますね。
「取引先様、社員と家族、地域社会の理解や支援のおかげで80周年を迎えることができました。近年は新型コロナウイルスの流行、海外での戦争など、これまでの日常から想像できないような現実が起こっています。近視眼的に利益を追求する昨今の風潮から、長期的な目線で企業を成長させるべきだと強く感じています。物流倉庫は投資コストも嵩むので、中長期的な視点での投資になります。さらに長い目を持ったビジネス創出が重要となるでしょう。ですので、社会から必要とされる会社にならなければ、100周年、120周年と歴史を刻むことはできません。だからこそ、私たちは『物流を通じて社会を豊かにする』という基本理念に立ち、逆風に耐性がある強固な事業構造を整えることが先決であり、社員とその家族、お客様、協力会社様、社会を豊かにするために前進することが企業価値の向上につながります」
「物流は日常生活を支える大動脈です。1日でも滞ってはいけません。現在は新型コロナの影響でインターネット通販や巣ごもり需要が高まっています。弊社では、通販事業者の物流拠点までの輸送であったり、テイクアウト用の食品トレーなどのお取り扱いもございます。」
自然災害や感染症の流行などがあっても事業を継続し、当たり前の社会生活を守ることが社会貢献につながると、社員は使命感を抱いています。2019年に千葉県を相次いで襲った台風の際やコロナ蔓延の状況下においても、物流を滞らせるわけにはいかないと、安全に細心の注意を払いつつ、従業員一丸となって業務に取り組みました。
「地域社会でイベントがあれば協賛させていただきます。また、業界団体にも積極的に参加して地域の課題解決や改善について取り組んでいます。70周年以降の節目には交通事故を1件でも減らせればと、支店や営業所を構える自治体に寄付をして交通安全啓発に役立ててもらっています。子どもたちの情操教育の一助になればと絵画の寄贈も考えております。
また障がいのある方々が描かれたアート作品を積極的に購入するなど、自立支援につなげる活動にも取り組んでいます」
◆「創造し、挑戦する」企業へ
― 100年企業へ向けた意気込みをお願いします。
「創業以来、今日まで物流事業を本業にして『地域社会と共存共栄し、お客さまから信頼を得るとともに、物流を通じて社会を豊かにする』を経営理念に、地域に根差した事業を展開してきました。お客さまの要望に真摯(しんし)に応えて信頼関係を築き、地域社会から必要とされる企業と認めていただいたことは弊社の強みであり、事業拡大の礎になっています。商売の基本は『信用』と『地域貢献』です」
「事業の継続の根幹を成すものは、昔も、今も、未来も『無事故・無災害の安全で健康な職場づくり』の確立です。安全は危険予知能力を常に発揮し続け、防衛運転・防衛作業の努力を重ねることで初めて維持されます。事故防止は社会の要請であり、弊社の使命です」
「経営環境は『変化こそ常態』と認識する必要があります。先の100周年を目指すために最も必要なことは、安定志向から脱却することではないでしょうか。80年間の歴史で現代でも通用する考え方や業務運営手法は、更に磨きをかけ、より良くする努力を重ねることが重要です。一方で従来の概念に基づいた業務運営手法では目標達成できないケースもあります。激変している時代こそ現状打破の精神で未来を創り上げる力が必要です。80周年を迎え、企業価値向上の会社メッセージとして『創造し、挑戦する』を制定しました。従業員と一体となって100年企業を創り上げたいですね」



