2020夏季千葉県高等学校野球大会 あの瞬間を捉えた写真も多数

【千葉魂】種市「けがの功名」信じて 手術日、タオル持つファンに涙

9月に右肘手術を受け、再起を目指している種市=ZOZOマリン
9月に右肘手術を受け、再起を目指している種市=ZOZOマリン

 その時、病院のベッドの上にいた。9月14日、種市篤暉投手は横浜市内の病院で右肘内側側副靭帯(じんたい)再建術の手術を行った。時間にして2時間。術後4週間ギプス固定し、術後4カ月よりスローイングを開始という大手術だった。最後に記憶にあったのは手術台。その後、麻酔の効果で意識がもうろうとなり、起きた時には右手にはギプスが固定されていた。窓の外を見ると綺麗な夕焼けが見えた。

 時を同じくしてZOZOマリンスタジアムではバファローズ18回戦がナイトゲームで行われていた。ベッドで痛みと闘いながらも試合が気になった。だからスマートフォンで中継動画を見ていた。試合は先輩の二木康太投手が無四球で3安打完封。お立ち台に呼ばれた。その雄姿が何ともうらやましかった。その時だった。ふとスタンドのファンが映し出された。種市のタオルを手にしていた。

 「ボクのタオルを持っている人が目に入りました。本当に涙が出るほどうれしかったです。今まで感じたことがない感情でした」

 種市の目が潤んだ。病室で一人、涙した。自分がいるはずもないスタジアムで自分のことを想(おも)い、タオルを掲げてくれているファンがいる。マウンドで投げている時であれば、なにげない光景だが今は違う。待ってくれているファンがいることに何ともいえない幸せに包まれた。

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 種市は7月25日のライオンズ戦(メットライフ)でプロ初完封を記録。しかし、一寸先は闇だった。8月1日のイーグルス戦(ZOZOマリンスタジアム)で5回2/3、8失点。肘に腫れがあり病院に行った。「本当に全然大丈夫だと思っていた」と軽く考えていたが手術が必要と分かった。落ち込んだ気持ちを支えてくれたのはファンの存在であり先輩投手たちだった。同じ手術を行った西野勇士投手、岩下大輝投手からは入院前にいろいろなアドバイスをもらった。励ましてくれた。徐々に少しずつ前向きな気持ちを取り戻すことができた。

 「今は前向きに捉えています。しっかりとリハビリに取り組めば良くなる。良いボールが投げられるようになる。ここからどうなるか楽しみな気持ちです。けがをしないと分からない事もあった。プラスに捉えています」

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 入院の時間を利用してさまざまな本を読んだ。今まで手にしたこともなかった栄養学の本も読んだ。すべては自分の身体のためだった。無事に退院をし、今はギプス固定のまま、可能な範囲でのトレーニングを行っている。先は長い。しかし22歳の若者には果てしない未来がある。だから前向きに考えられる。いつかけがの功名と言える日が来るように今できることを全力で取り組む。焦らず一歩一歩。その先に見える光景がある。ZOZOマリンスタジアムで待ってくれているファンがいる。ヒーローインタビューに呼ばれた種市がお立ち台に上がる。万雷の拍手に包まれる中、「ただ今戻りました」と叫ぶ。種市にはそのイメージができている。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)



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