2020夏季千葉県高等学校野球大会

【千葉魂】苦しみ抜け出す七夕アーチ 安田、悔しさ原動力に

7日の西武戦でプロ2号、本拠地では初の本塁打を放つ安田=ZOZOマリン
7日の西武戦でプロ2号、本拠地では初の本塁打を放つ安田=ZOZOマリン

 強風が吹き荒れる七夕の夜空にアーチをかけた。7月7日、ZOZOマリンスタジアムで行われた埼玉西武戦。3年目の安田尚憲内野手がライオンズ先発高橋光成投手のフォークをすくい上げると、打球はライトスタンドへと吸い込まれていった。プロ通算2本目の一発は本拠地で初めての本塁打。開幕1軍に抜擢(ばってき)されるも、なかなか結果を出せずに苦しんだ若武者が久しぶりに満面の笑みを見せた。

 「自分自身、どう打ったかあまり覚えていない。まだまだだけど、あの一発で気分が楽になった」と1軍の壁の前に、もがき苦しんでいた安田は振り返った。

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 福岡でのホークスとの開幕3試合を終えて10打数無安打。チームが勝ち越した6月21日の試合も3番DHでスタメン出場し5打数無安打に終わった。勝利に沸く試合後のロッカー。仲間たちが勝利に酔いしれる中で一人、目を真っ赤にした。そしてバックヤード裏に姿を消すと黙々とバットを振り続けた。主軸に大抜擢されながら首脳陣の期待に応えられなかった悔しさが、帰京前の荷支度に忙しいはずの若者にバットを振る事を選ばせた。

 「うまくいかなくて、だいぶ悔しかったです。もちろん、そんな簡単にはいかない世界なのは分かっています。それでも使ってくれているのに結果が出ないのは悔しかった。試合に出させていただいている以上は責任が伴うと思っていますから」と安田。

 結果が出ずに苦しむ心を支えてくれたのは先輩たちの声だった。試合後のベンチで後輩が目を充血させていることに最初に気が付いたのは捕手の田村龍弘。「こんなことで泣いていたらあかんぞ!」とあえてみんなの前で大きな声で励ましてくれた。

 今年、タイガースから加入した鳥谷敬内野手も気にかけてくれる。大阪出身の安田にとっては「子供の時からのスーパースター。色々な話をしてくれる。毎日が貴重な時間になっています。吸収していきたい」と目を輝かす存在。ZOZOマリンスタジアムのロッカーは隣ということもあり、結果が出ずに苦しんでいると「切り替えていけよ」と必ず声をかけてくれる。凡退してベンチに戻ってきた時も話しかけてくれる。練習試合で三遊間を組み、失策をした時も隣の遊撃のポジションから「下を向くな。切り替えて」と強い言葉が聞こえた。先輩たちの優しさが身に染みた。そして折れそうになる心を支えてくれた。

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 全体練習前に室内練習場で打ち込み、試合後も打ち込む。意識しているのは速いストレートに打ち負けないスイングづくりだ。ZOZOマリンスタジアムでナイターが行われる際はデーゲームで行われる浦和球場での2軍戦に出場し、試合開始ギリギリに1軍に合流するいわゆる親子ゲームも積極的に行った。悔しさを晴らし、全ては期待に応え結果を出すため。

 「まだまだだけど、いいスイングが増えてきたと思う。もっともっとやらないといけないことはたくさんある。1軍のストレートを捉えられるための練習をしていきます。ボクは1打席1打席が勝負です」と安田から徐々に手応えを感じられる言葉が出るようになってきた。

 七夕のアーチの翌8日もチームがライオンズ先発今井達也投手のキレのあるストレートに苦しむ中で一人、気を吐き2安打と孤軍奮闘。12日の同カードも1点を先制されて迎えた二回の攻撃で同点の中前適時打を放った。少しずつ、しかし確実に前へと進んでいる。悔しい想(おも)いと人一倍強い責任感がこれからも背番号「5」を突き動かす。「幕張のゴジラ」。ファンは将来への強い期待を込めて彼をそう呼ぶ。そしてその想いに応えるべく若者は日々を全力で生きている。新人王獲得へのラストチャンスとなる3年目。もがき抜いた先にこそ明るい未来は待っている。

(千葉ロッテマリーンズ広報・梶原紀章)



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