2020夏季千葉県高等学校野球大会 あの瞬間を捉えた写真も多数

【千葉魂】励まされた母の言葉 和田、果敢走塁で支配下昇格

育成選手から1日に支配下となった和田=ZOZOマリン
育成選手から1日に支配下となった和田=ZOZOマリン

 普段はあまり表情に出さない若者がうれしそうに笑った。和田康士朗外野手が6月1日、支配下登録となった。育成選手として入団をして苦節3年。黙々と練習を繰り返し、試合では必死にアピールをする姿が認められた。

 「とてもうれしいです。正直、何度も心が折れそうになることがあった。今年で3年目。今年駄目だったら終わりと思っていた」

 背番号「63」。新たに支給されたばかりの真新しいユニホームに袖を通しながら和田はしみじみと振り返った。昨年は2軍で103試合に出場。それでもスタメン出場の機会は多くはなかった。途中出場。それも点差が開いてから出番が回ってきた。自分よりも年下で注目度の高い若手野手がスタメンに名を連ねている状況に危機感は募るばかりだった。

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 「ファームでもなかなか試合に出れない時もあって、すごく落ち込んだ時期もありました」と和田は振り返る。月に1回ほど休みを利用して埼玉県東松山の地元に戻った。友達の親が経営している行きつけの散髪店で髪を切るのが目的だが、駅に着くと決まって母親が迎えに来てくれた。「もう駄目かもしれない」。車の中で思わず弱音を口にした。

 厳しく言い返されると思った。高校の時には野球を諦め、陸上部に入部。走り幅跳びの選手に転じ、一度は野球から離れた。ただ、再び野球への情熱が芽生え、高校1年の3学期に陸上部に退部届を出すと、地元のクラブチームに入り野球を再開した。これまでの過程を考えると育成選手とはいえプロの舞台でチャンスをもらえている現状での弱音を親は受け入れてくれないと思っていた。しかし返ってきたのは優しい言葉だった。「それならそれで仕方がないけど中途半端にはならないように、悔いの残らないようにね」。母の優しさが身に染みた。

 「一度、野球を諦めた身。ワガママを言ってまた野球を始めた。だから優しい言葉が返ってきたのがとても印象的だった。励まされました」

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 元々はフルスイングが売りの選手でもあったが、少ないチャンスをものにするため足を生かす事に決めた。代走で出場するとアピールのチャンスとばかりに燃えた。19年はイースタン・リーグでは2位となる23盗塁を決めた。1軍の舞台で同じく育成から支配下登録され足で注目を集めるホークス周東佑京内野手の存在も大きかった。「代走のポジションであそこまでやれることを証明してくれたと思います」と和田。目指すべき具体像が見えた。

 そして今春の石垣島キャンプ。そのアグレッシブな走塁が1軍首脳陣の目に留まる。そのまま練習試合も1軍帯同となると代走から盗塁を決め、果敢に本塁を狙う姿勢を見せ続け、ついに支配下登録となった。井口資仁監督は「和田は自分の力で支配下選手契約を勝ち取った。彼の一番の魅力は足。十分に1軍戦力として貢献してもらえると思っている」と期待を込めた。そして和田は支え続けてくれた両親への感謝の言葉を並べた。

 「両親に感謝の気持ちを伝えたいです。ここまでの道のりはとても長く感じました。両親に励ましてもらい、その言葉がこれまでの自分の支えでした」

 支配下登録されたばかりの練習試合では6月3日から6日までいずれも途中出場をすると4試合連続で盗塁を決めた。

 今はすべてが勉強。映像を見て相手投手の特徴を頭に叩き込み、塁に出れば積極的にスタートを切る。次の目標は開幕1軍だ。貪欲に次の塁を狙う姿はマリーンズの新しい風となる。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)



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