【千葉魂】旅立つ高野が胸に刻む言葉 根元現コーチから受けた祝福

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プロ初登板で力投する千葉ロッテ時代の高野=2016年5月28日、QVC(現ZOZOマリン)
プロ初登板で力投する千葉ロッテ時代の高野=2016年5月28日、QVC(現ZOZOマリン)

 「やることをしっかりとやっていれば、いいことがあるよ」。トレードでタイガースへ移籍した高野圭佑投手が胸に刻んでいる言葉である。それは昨年8月19日。楽天生命パーク宮城でのイーグルス戦の事だ。前年の7月以来、1年以上もの長い期間にわたって1軍での登板機会がなかった高野にようやくチャンスが巡ってきた。久々の1軍のマウンド。出番は3点ビハインドの八回。負けが濃厚の場面での登板だったがアピールすべく必死だった。アドレナリンが出た。

 5番の銀次から始まる打順。先頭を二ゴロに抑えるとウィーラーを三ゴロ。嶋を右飛に打ち取った。久々の登板は三者凡退。上々の内容だった。すると九回に打線が爆発し一挙5点を奪い、大逆転。白星が高野の元に転がり込んできた。ルーキーイヤー以来のプロ2勝目。2軍で腐らずに黙々と投げてきた男に野球の女神が微笑んだ。決勝点を放ったのは根元俊一現1軍内野守備・走塁コーチ(昨年限りで現役を引退)。2軍で共に過ごすことが多かったベテランが試合後、ロッカーを出て帰りのバスに乗り込む前に優しく語り掛けてくれた言葉を高野は一生、忘れない。

 「やることをしっかりとやっていれば、いいことがある。しっかりとやっていたら、こういうこともあるんだよ。高野が勝ち投手になってオレも嬉しい。凄く嬉しい」

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 トレードを通告された時、3年半過ごしたマリーンズ時代の様々な思い出が走馬灯のように蘇ってきた。風が強かった本拠地でのプロ初登板はもちろん思い出深い。しかし、一番最初に頭を駆け巡ったのは、このゲームだった。

 「正直、1年以上も1軍から遠ざかっていて、きつかった。色々な事を試してみても、うまくいかなかったり結果が出なかったりとつらかった。そんなファームの日々で根元さんはいつも声をかけてくれた。一塁を守っていてマウンドにいる自分に冗談を言ってくれたりと、硬くなっていた自分を何度もほぐしてくれた。それだけに一緒のタイミングで1軍にいて根元さんのタイムリーで勝ち投手になれて、ああいう風に声をかけてもらえたのは最高の思い出です」

 なかなかスポットライトを浴びることができなかった苦悶の日々の中で我慢をし続け、黙々と2軍で汗を流し続けた高野。歯を食いしばり、時には自暴自棄になりそうになりながらも自分を律し努力を重ねた。その背中をベテランはしっかりと見てくれていて、優しく励みし続けた。そしてあの日、まるで自分の事のように2年ぶりのプロ2勝目を喜んでくれた。試合後に受け取った祝福の言葉はいつしか自分の人生における大事な指針となった。

 だからトレードを通告された時も驚きはあったが前向きに捉えた。求められての移籍。チャンス到来に武者震いを感じた。開幕こそ1軍入りしたものの、その後は2軍でいつ出番が来てもいいようにとしっかり準備をしてきた高野は予想もしない形でチャンスを手に入れた。

 「こうやって求められて移籍するわけですから本当にありがたい。幸せな事だと思っています。これもやることをしっかりとやっていたから巡ってきたのだと思っています」

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 高野は7月7日、西宮市内のタイガース球団事務所で記者会見に臨み「ストレードでどんどん押していきたい」と熱く抱負を口にした。その表情はすがすがしく眼はキラキラと輝いて見えた。「やることをしっかりとやっていれば
、いいことがあるよ」。新天地でも、生き方は変わらない。黙々と準備を行い、努力を重ねていく事でチャンスをつかむつもりだ。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)