【千葉魂】 地獄からはい上がった男、西野 かつての守護神、3年ぶりセーブ

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5月4日の日本ハム戦で2015年以来のお立ち台に上がった西野=ZOZOマリン
5月4日の日本ハム戦で2015年以来のお立ち台に上がった西野=ZOZOマリン

 死闘を最後に締めたのは背番号「29」だった。5月9日、大宮で行われたライオンズ戦。九回2死から同点に追いつかれ、窮地に立たされたマリーンズはそれでも土俵際からの粘りを見せた。延長十一回に1点を勝ち越して迎えたマウンドにかつての守護神、西野勇士投手が向かった。打者3人に対して2奪三振。11球で料理し、2016年7月26日のバファローズ戦(京セラ)以来、3年ぶりとなるセーブを記録してチームの勝利に貢献。マリーンズの勢いを加速させるターニングポイントとなった試合において勝利の立役者となった。

 「緊張しました。試合の最後のマウンドに立って、勝つというのはやっぱり格別なものがありました」

 今季はここまで14試合に登板をして防御率4・15。5月4日のファイターズ戦(ZOZOマリンスタジアム)では15年7月28日以来となるお立ち台に立つなど好調のチームにあって、重要なピースとなっている。

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 もがき苦しんだ日々の中で光を見いだした。16年に21セーブを挙げたがシーズン中は右肘の痛みを感じながらの日々。翌年は肘の状態も考慮し先発に転向した。しかし、思ったようなパフォーマンスは出せず、5試合に登板をして2勝3敗。そこから暗い森の中をさまよい続けた。昨年は14試合に登板をして防御率6・19。1年の大半は2軍で過ごした。

 「自分の中では先発に転向して変な責任感を持っていました。10勝以上はしないといけないと。肘をかばいながら我慢をして投げていた。結果的にそれが悪い方に出てしまいました。フォームも崩れ、いろいろなところも崩れてしまった。スピードも出なくなった。結果的に中途半端にやってしまったことで、すべてが悪くなってしまいました」

 一度、狂った歯車を戻すのは簡単な作業ではなかった。昨年は2軍で防御率5・71。プロ通算86セーブ。オールスターに2度出場し、侍ジャパンにも2度選出されている男が若手相手に打ち込まれる姿があった。

 「なんでこんなに打たれるのか僕も分からない。球もいかないし、自信がない。こんなに打たれたことは育成選手時代にもない」と肩を落とした。

 悩み苦しみ、自信を喪失した。かつてマリーンズ不動の守護神として君臨しマウンドで自信満々に投げていた男の姿はそこにはもうなかった。ただ、光明があった。それは数年、悩みの種だった右肘の痛みを感じなくなっていたことだった。シーズンオフの12月。意を決して渡米した。自らパソコンや書籍などで色々な事を模索し調べている中で動作解析を専門とするシアトルのトレーニング施設に行き当たった。知り合いを通じてアポを取り10日間の日程で訪問した。映像によるフォーム分析。その中で、まったく見えなかった未来への道がはっきりと見えた。

 「自分で調べてメジャーリーガーなども通う有名なその施設に行き着きました。その施設のコンセプトの一つとしてけがをした選手をけがする前の良かった時のフォームに戻すというのがあったので、これにかけようと思いました。映像を色々な角度から見て、照らし合わせて、色々な指摘を受けてこれだという発見があった」

 あえてフォームの技術的な改善点は明記しないが、西野本人は確かな発見があった。良かった時にあって、肘をかばいながら投げていた時に失ったもの。効果てきめんだった。フォームの修正後、納得いくボールが戻ってきた。ストレートは140キロ後半を計測するようになるとフォーク、スライダーもキレを取り戻した。なによりもオープン戦での打者の反応に手ごたえを感じた。

 「今は年間を通して1軍にいて、チームの勝利に少しでも貢献したい。それが目標です。この2年間、貢献をしていないので、どんな形でもいいから結果を出したい」

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 苦しみ、悩み、もがきながら、はい上がってきた男の存在がマリーンズ投手陣に厚みを出している。現在、2位タイで首位のホークスと2・5ゲーム差。勝ち星をしっかりと拾えている過程の中には時には負けている場面で、そして均衡している試合の中で0点に抑え反撃の流れをつくる西野の活躍なしには語れない。一度、地獄を見てきた男は伊達ではない。どんなピンチも思い通りに投げられなかった日々と比べると怖くはないのだ。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)