【千葉魂】笑顔なきサヨナラ打 平沢「結果を出し続けないと」

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17日の巨人戦でサヨナラ打を放った平沢=ZOZOマリン
17日の巨人戦でサヨナラ打を放った平沢=ZOZOマリン

 ガッツポーズはなかった。打った瞬間にサヨナラ打を確信したが、冷静に一塁を踏んだ。そしてベンチから駆け付ける先輩たちを待った。17日のジャイアンツ戦(ZOZOマリンスタジアム)。人生初のサヨナラ打を打った20歳の若者は控えめな笑顔を見せた。それはプロ3年目の平沢大河内野手の想いのすべてを物語っていた。

 「前進守備だったので打った瞬間に抜けることは確信しました。ただ、自分はこれで喜んでいられる立場じゃない。結果を出し続けないといけないので、もちろんうれしかったですけど、そこは冷静な部分がありました。これで浮かれることなく継続的に結果を出したい。次の甲子園でもチャンスがあればしっかりと結果を出したい。すぐにそれを考えていました」

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 5月24日のファイターズ戦以来となる久々のスタメン出場だった。その間、打席に立ったのは2度(1安打)。努力と準備を重ね、ようやく出番は巡ってきた。気合を入れて臨んだが結果は出ない。3打数無安打で最終回を迎えた。1点ビハインドから同点になり1死二、三塁で打席が回ってきた。劇的勝利の立役者になれる千載一遇のチャンス。マウンド上にいるジャイアンツ守護神カミネロの特徴から直球一本に絞った。

 「打席に入る前からストレートを狙おうと決めて行きました。とても速い投手なので1、2、3で思いっきり打とうと。中途半端なスイングにならないように。悔いの残らないように打とうと決めていました」

 初球のフォークに空振りをした。それでも狙いは変えない。むしろ次こそストレートが来ると信じた。その2球目。再びフォークも今度はゾーン真ん中付近への甘い球となった。狙いとは違ったが鋭くスイングをすると打球は一、二塁間を奇麗に抜けていった。

 「ボクで決めるという気持ちで打席に入った。ヒットを打つという気持ち。結果的に狙いとは違ったけど、迷いなく打席に入れたことがいい結果につながったと思う。これまでやってきたこと、今やっていることも含めて自信を持って、結果が出ると信じて打席に入った。ただ、まだまだやらないといけないことは多い。これに満足せずにやっていきたい」

 歓喜のサヨナラを冷静に受け止めた若者はヒーローインタビューを終えると休むことなく、そのままバットを握り一目散に室内練習場に足を向けた。一度の歓喜に酔い浸るのではなく、すぐに次へと切り替える。それは、やはり継続的に結果を出さなくてはいけないという自分の立場が見えている証拠だ。

 「今年、結果を出さなければ本当にもうチャンスは来ない。自分の野球人生は終わってしまうくらいの強い覚悟で挑んでいます」

 若者はそう言ってバットを振り続けている。打席に立つチャンスに恵まれなかったこれまでも、そうやって全体練習前の特打。試合後の居残り特打を繰り返し、打撃を磨いてきた。力がバットに伝わりやすい下半身でしっかりと打つ打撃をつくり上げ、この日のチャンスをものにした。

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 今季は開幕から1軍入りするも狙っていた遊撃のポジションを奪うことは出来なかった。一塁、三塁、右翼。さまざまなポジションに挑戦し、試合中はベンチで虎視眈々(こしたんたん)と出番を待った。周囲から「試合に出られないのなら2軍で試合に出ていた方がいいのではないか?」との意見も耳に入るが本人はそれを強く、否定する。「自分は1軍にいたい。1軍にいることで見えることがある。1軍でしか経験できないことがあると思っている。今年1年、1軍でいろいろなポジションに挑戦して自分のチャンスを広げていきたいです」。その想いで毎日を必死に生き、あきらめなかった結果、巡ってきた好機でしっかりと決めた。指揮官もまた若者がガムシャラに努力する姿と想いを誰よりも注視してきた。だから絶好機で代打を出さずにこれで決まるという確信を感じた。

 「頑張っているよね。去年から試合前後で特打をしたり、時間を見つけてはティー打撃をしたり、朝早くからウエートをしたり、いろいろと自分の時間をうまく利用して、もがいている。そういう時間の使い方は大切。必ず報われる」。井口資仁監督は目を細め、一打に賭けた若者の想いを高く評価した。

 試合終了から2時間後。室内練習場での特打を終えると、すれ違った鳥越裕介ヘッドコーチから声を掛けられた。「忘れるな。これを習慣づけるんだ。継続。何事も継続が大事だぞ」。大粒の汗を拭おうともせず、平沢は直立不動になって「ハイ!」と元気よく大きな声で応えた。それはこの日、一番の笑顔だった。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)