【千葉魂】苦闘の一年を糧に 鈴木、新たなシーズンへ

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契約更改の会見で、自身の「今年の漢字」に選んだ「糧」を書いた色紙を手にする鈴木=12日、ZOZOマリン

 冬空の広がる都内の喫茶店に鈴木大地内野手はいた。テーブルには大事そうに授賞式で、もらった記念品が置かれていた。今年、初めて三井ゴールデングラブ賞を受賞した。それはプロ入りからずっと目標にしていた賞だった。ショートからセカンドへコンバートとなった今年。大きな転機をチャンスに変え、鈴木はガムシャラに日々を送った。苦しいシーズンだった。新しいポジションに悪戦苦闘しながらもキャプテンとしてチームを引っ張ることが求められた。開幕から苦境にあえぐマリーンズを立て直そうと必死に生きた。やることはやった。ただ、今、一年が終わり、振り返ると悔しさしか残っていない。自問自答の日々にも、見ている人は見てくれていた。背番号「7」が必死にプレーする姿を評価した。だからこの日、ゴールデングラブの授賞式に呼ばれた。最下位に沈んだチームにあって唯一の表彰選手だった。

 「いろいろな人のおかげです。支えてくれたファン、裏方の皆さま、起用をしてくれた伊東前監督、仲間、家族。こんなヘタクソな自分がこのような賞をいただけた。今、改めて感謝の想いがこみ上げています。皆さま、一人ひとりの顔を思い浮かべています」

 華やかな表彰式で笑顔をつくり、喜びのコメントを口にした。一方、心の中ではもうすでに来季に向けた熱い決意がこみ上げている。今年の全てを「糧」にして挑む一年。そう決めた。だから多忙を極めるオフも時間を見つけては体を動かし続けてきた。年明けもすぐに始動。2月1日のキャンプインからフルスロットルで動ける状態にする。

 「今年の全てを糧にしたいと思います。最下位に沈んだ苦しく悔しい日々を過ごした一年を。伊東前監督と出会い、別れることになった事。井口新監督の下で戦えることになった事。すべての事を糧に来年は結果を出さないといけないと思っています」

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 新たな環境の変化もまた糧となる。この一年をかけてセカンドの定位置をつかんだ男は新チームが始動した秋季練習初日に井口資仁新監督からサードコンバートを打診された。ショートからセカンド。そして来季はサード。目まぐるしく変わる職場にも一切、弱音は吐かない。それはむしろ自分にとってチャンスなのだと前向きに考えることができている。

 「セカンドにコンバートされた時も、後々、考えるとあれがいい転機だったなあと思えるようにしたいと考えていた。だから来年、サードにコンバートになることも同じように考えている。自分自身も刺激になるし、負けるものかという想いになっています」

 コンバートと同時に新指揮官からは「一人がチームを引っ張るのではなくて全員がチームを引っ張る。そんなチームにしたい」とキャプテン制度の撤廃を伝えられた。4年間、担ってきた重責から解放された瞬間だった。そして、それもまた若者の心を刺激した。

 「キャプテンだからチームを引っ張るとか、キャプテンじゃないから自分の事だけをやればいいとか、そういうのはない。逆に自分が見られるのはこれから。キャプテンではなくてもそれ以上の存在感でチームを引っ張れる存在でありたいと思う。来年、自分がどのような立ち居振る舞いをするか。周りからはそういうところも見られていると思う」

 だから秋季練習、秋季キャンプ、台湾遠征と鈴木はとにかく声を出した。誰よりも声を張り上げ、チームを鼓舞した。時には若手選手に具体的なアドバイスを送り、背中を押した。これまで以上の存在感と確かなキャプテンシーが湧き上がっていた。

 「目標は同じサードを守るホークスの松田宣浩選手。あの人のようなムードメーカーになりたい。サードはホットコーナーと言われますが、心もホットでありたい」

 熱男で知られ、常勝ホークスを様々な角度から引っ張り続ける男を具体的な目標に掲げた。打撃で、守備で、そしてムードメーカーとして一年間、チームを引っ張り続けることは並大抵のことではない。それでも鈴木は悔しさを糧に挑む来季、それをやり遂げ、大きな結果を生み出すことを自分に誓った。

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 師走の東京はどこかせわしく感じられる。喫茶店の窓の外で人々は忙しそうに歩く。54勝87敗2分け。苦しかったシーズンは終わり、新しい一年に向かって着々と時は刻んでいた。キャラメルで味付けされたホットミルクを静かにすすりながら、鈴木は苦しく悔しい一年を振り返り終えた。出会い、別れ、挑戦、新たな旅立ち。すべてを胸に秘め、糧として鈴木大地の2018年が始まる。

 「最高のシーズンにします。今年のいろいろな事をしっかりと糧にしてボクもチームも成長をしないといけない。そういう意味で真価が問われる一年になると思います」

 キャプテンマークがなくても、マリーンズを引っ張るのは背番号「7」だ。新生井口マリーンズの中心にこの男がいる。すべてを糧に挑む新たな一年がまもなく幕を開ける。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)