【千葉魂】 戦友への思い 力に変え ルーキー吉田、卒業式でメッセージ

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 3月25日、QVCマリンフィールドで開幕前の全体練習が行われていた。午前10時に開始した練習は午後2時頃に終了した。誰もいなくなったグラウンドにはドラフト2位ルーキー・吉田裕太捕手(立正大)の姿があった。日課である居残り練習を繰り返していた。一日でも早くプロのレベルに慣れたい。彼の練習姿勢からは、そんな思いがヒシヒシと感じられる。すべてのメニューをこなした後、声をかけた。

 「実はきょう、大学の卒業式なんですよ」

 吉田の一言に、思わずハッとした。春季キャンプ、オープン戦とチームに溶け込み、そつなくプレーする姿に、すっかり忘れていた。吉田は3月に卒業するまでは、まだ大学生だった。そしてこの日がその卒業式だった。

 「もちろん、欠席になるのは仕方がないです。大学の監督、コーチからも『来なくても大丈夫だから』と言ってもらいました。4年間、一緒に野球をした仲間たちに会えないのは寂しいですけど、プロ野球の世界に入った以上、仕方がないことだと分かっています」

 その表情からは寂しさのような感情は微塵も感じられなかった。ただ、4年間、一緒に闘ったチームメイトへの強い思いを口にした時、少し表情が緩んだ。それは今の吉田にとっての大きなモチベーションとなっている。

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 「野球部の4年生は全員で20人。その中でこれからも野球を続けられるのは自分も含めてたったの4人なんです」

 社会人野球チームが縮小傾向にある今日、名門大学野球部とはいっても、なかなか社会人まで野球を続けられないのが現状だ。野球への未練を捨てて、それぞれが地元に戻って一般の企業に就職する。野球を続けたくても続けられなかった仲間がいる。その中で憧れの世界に入って、多くのファンの前で野球ができる幸せをかみしめるように話をしてくれた。

 卒業式を欠席する代わりにメッセージを送った。式では吉田に立正大学から学長賞を授与することが発表された。そして吉田のメッセージは会場でみんなの前で読み上げられた。その夜、仲間たちからは「いいメッセージをありがとう。元気が出たよ」と連絡が入った。その言葉に胸が熱くなるのを感じた。式には行けなくても、4年間一緒に泣いて笑った仲間たちと気持ちがつながっているのが嬉しかった。

 「きょう卒業式に出ることができないのは残念です。私はプロ野球の世界で精一杯頑張ります。みなさんも社会に出て頑張ってください。お互い、社会ではいろいろな大変なこともあると思いますが、この大学で4年間を一緒に過ごせたことを大切な思い出にしてこれからも頑張りましょう」。そんなメッセージだった。

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 あれから時は流れた。開幕して8試合が終了した。そのうち4試合で先発スタメンマスクに抜擢された。5連敗中だった4日の日本ハム戦(QVC)では見事、投手陣をリードし、チーム初勝利へと導いた。そしてチームはそこから3連勝。順風満帆なスタートだ。

 「今はみんな、4月1日に入社式を終えて会社の研修などを頑張っていると聞いています。みんなも自分もこれから社会の厳しさに戸惑うこともあると思うけど、自分としては試合に活躍することで仲間たちにエールを送れたらと考えています。野球を仕事にできる幸せを感じながら野球をしていきますよ」

 長いシーズンは始まったばかりである。プロの壁は必ず訪れるだろうし、厳しさを痛感することもあるだろう。疲労が蓄積し苦しい時期もきっとくるだろう。そんな苦難も吉田なら歯を食いしばって、乗り越えてくれると思う。仲間たちの野球への思いを一身に背負い、マスクをかぶっている。だから簡単に弱音を吐くことはない。背番号「24」のプロ野球人生は始まったばかり。その目はいつもキラキラと光り輝いている。未来への希望が感じられる綺麗な瞳をしている。

 (千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)