【千葉魂】 「父ちゃん、頑張るよ」 妻の後押しで入団 子持ちルーキー吉原

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 マスコミからの質問に対して少しだけ時間を置くとしっかりと語り出した。今年のドラフトで育成枠1人を含む7人の新人選手を獲得した。その中でもドラフト4位指名の吉原正平投手(24)が異彩を放っている。12月3日に行われた入団会見では、おのずと記者からの質問も集中した。

 「それはもちろん、会社に残っていた方が安定していたと思います。普通のサラリーマンですから。定年まで働いて退職金をもらってという生き方の選択肢はもちろんありました。でも……」

 大企業の日本生命からのプロ入り。しかも4月に結婚。9月19日に長男が誕生したばかりであった。その中での選択は決して簡単ではない。安定を捨てて、夢を追いかける。時にはその夢は数年で終わる可能性がある。契約金とサラリーマンよりは高い年俸を獲得できるとはいえ、それはその後の人生が保障されるほどのものではない。ギャンブルだと周囲から反対されてもおかしくはない。そういう状況で10月、ドラフトに指名された。

 「後悔はしたくないなと。人生は一度だけですから。そういう選択をしたわけですから、全力でその選択が間違っていなかったということを見せるしかない。一球一球に魂を込めて投げていきたい。後悔が残らないようにですね」

 そうは言いながらも、ドラフト指名された直後は亜由美夫人(24)の気持ちを考えた。妻は果たしてプロ入りをどう思っているのだろうか?安定を捨てること、誰も知り合いのいない千葉に行かなくてはいけないことをどう感じているだろうか?「ロッテに指名されたよ。行ってもええか?」。言葉に迷いながらそう告げると妻は即答した。「私はアナタについて行く」。力のこもった強い口調だった。福岡県遠賀郡出身。隣町の中学校に通っていた時に知り合い、愛をはぐくんできた同級生の妻の力強い返答がなによりも嬉しかった。リスクを背負う夢への挑戦を力強く後押ししてもらった。

 「よっしゃあ、父ちゃん、頑張ろうって思いましたよ。プロではいつでも家族を背負って投げるつもりでいます。一緒に投げる。きっと子どもや妻の思いはボールにもこもってくれると思う。こんな心強いことはない。見えない力も自分の武器です」

 QVCマリンフィールド見学、ロッテ本社での入団会見と続いたハードスケジュール。取材が始まる頃には息子の悠惺くんはスヤスヤと眠っていた。そんな愛息を優しい目で見つめ、抱きしめながら吉原はポツリとつぶやいた。

 「ボク、絶対にこの子が物心ついて、野球が分かるようになるまで野球を続けます。息子に自分が野球をやっている姿を見せたい。それを目標に毎日、頑張りたいです」

 その両手に息子のなんとも温かい体温を感じた。そのぬくもりが吉原の心、奥深くを熱くさせる。父ちゃんは絶対に負けない。誰よりも輝いてやる--。子持ちルーキーの一年目が、間もなく始まる。

 (千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)