【千葉魂】 大嶺を支えた登場曲 BEGINの「爬竜舟」

  • LINEで送る

 「爬竜舟(はりゅうせん)」という曲がある。沖縄県石垣市出身のバンドグループ・BEGINの曲で、2010年9月8日に発売されたアルバム「ビギンの島唄 オモトタケオ3」の中に収録されている。この曲が大嶺祐太(24)のことを思い、作られたことを読者の皆様はご存じだろうか?

 BEGINは同じ石垣島出身。同じく沖縄県出身でbayfmのパーソナリティー、きゃんひとみさんに誘われて07年オフに都内で行われたライブに行って以来の付き合いだ。

 「憧れの方々です。きゃんさんから『大嶺に応援歌のような曲を作ってあげて』とお願いしてもらって……。でも、なかなか登場曲として、使う機会がなかった。今年、こうしてマリンの試合で使うことが出来て、本当に嬉しいです」

 大嶺が振り返るように、この曲が完成した10年に、音源をプレゼントされた。すぐにQVCマリンフィールドでの登板する際の登場曲に使おうと意気込んだが、完成したその日に2軍落ち。翌11年は札幌ドームで1試合投げただけ。さらに12年は1軍未登板で終わった。せっかく大先輩たちが自分を思い作ってくれた曲は結果的に3年近く、千葉ロッテマリーンズの本拠地QVCマリンフィールドでお披露目されることなく時が流れた。そして今年、やっと満員の観客の前で晴れて曲が披露された。大嶺はその歌詞の意味をかみしめながら投げた。QVC2度目の先発登板となった5月19日の広島戦では、実に3年ぶりの完封勝利。試合後、私はここぞとばかりに唄の意味を聞いてみた。

 「沖縄には海の安全-や豊漁を祈願する舟の競争があって、これに参加する舟のことを爬竜舟と言うんです」

 独特の淡々とした落ち着いた口調で大嶺は話し出した。これまでの苦悩を思い返すように言葉を続けた。

 「でも、この競争を見に来てくれるお客さんが一番沸くのは、舟が転覆して、それを必死に起き上がらせてまた漕ぎ出す。そういう場面なんですよ。僕の野球人生も一緒。失敗しても、苦しく辛い日々が続いても、また起き上がって立ち向かう。そういう姿をファンは見てくれている。きっとそういうメッセージなのだと思います」

 2011年4月17日の日本ハム戦(札幌ドーム)でノックアウトを食らい、そこから長い苦難の日々が始まった。不調に続き、故障にも見舞われた。自分を見失いそうになった時もあったが、この唄に込められたメッセージが彼を支えた。必ず起き上がる。その思いは今年、大きな花を咲かせようとしている。

 「野球はピンチがあって当たり前と思うようになりました。そうすると不思議と肩の力が抜ける」。転んでも歯を食いしばって起き上がるその姿はきっと、爬竜舟を見守るお客様と同じように、千葉のファンの心にも響くはずだ。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)