「しんどかったろうに」 自殺職員の父、無念 森友改ざん、説明なく

自殺した財務省近畿財務局の男性職員の写真を手に岡山県内の自宅で取材に応じた父親

 学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書改ざんを巡り、3月に自殺した財務省近畿財務局の男性職員=当時(54)=の父親(83)が15日までに岡山県内の自宅で取材に応じた。「真面目で正直だったから、しんどかったろうに」。上司の指示で改ざんを強要されたことが父親宛ての遺書に記されていたと明かし、財務省から説明がない状況に不満を漏らした。

 最後に会ったのは2月中旬。帰省した際、こたつで世間話をしたが、仕事のことは触れなかった。「今から考えれば少し元気がなかった。精神的に疲れてたんじゃろう」

 数週間後の3月7日、男性は神戸市の自宅で命を絶った。病院で対面。きれいな顔で眠っているようだった。父親宛ての7、8枚の遺書には本省の指示で改ざんを強要されたとして、思い悩んだことが書かれていた。

 「(改ざんを)やらされ、あんなことになった。もう帰ってこん」と父親。改ざんの方向性を決めた当時の理財局長佐川宣寿氏は男性の自殺から2日後、国税庁長官を辞任。無念の死が報われたような気がして「ほっとした感じはあった」と話す。

 改ざんを捜査した大阪地検特捜部は5月、虚偽公文書作成容疑などで告発された佐川氏らを不起訴にした。検察審査会の判断は残るが「難しいことは分からない。あまり考えたことない」。

 財務省は6月、改ざんに関する調査報告書を発表。近畿財務局職員が本省の度重なる指示に強く反発し、改ざん作業から外れたとした。この職員が男性なのか定かではなく、父親はどのように関わったか気になっている。財務省側から説明はなく「息子は一人でしよったわけでもない。同僚もおるはずなのに、なぜ出てきて真相を話してくれないんか」と不快感を示した。

 今月2日に発足した第4次安倍改造内閣で留任した麻生太郎財務相については「そりゃ悔しさや腹立たしい気持ちはある。彼は下の者がやったことなんて何とも思ってないでしょう」と、険しい顔で語った。

 曲がったことが嫌いで努力家だったという男性。就職後に夜間大学に通い、教員免許を取得していた。「辞めて転職していたら死なずに済んだ…」。父親は笑顔で写る若いころの写真を手に、唇をかみ、涙をにじませた。


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