浅草の「におい」を各地に 企画打ち出す志ん輔さん

「『あの芸、あの人が良かったね』とお客さんの心に残る公演にしたい」と話す古今亭志ん輔さん=東京都内

 落語家の古今亭志ん輔さんが、ごった煮のように芸が入り交じっていた東京・浅草の「におい」を伝えようと、さまざまな仕掛けを構想中だ。7月に金沢市でタイプの違う芸人が集まる公演を、その後は浪曲などを取り入れた会を催す。「異業種がぶつかる場を洗練させ、各地へ広めたい」と先を見据えている。

 石川県立音楽堂での落語会は、ベテランの春風亭一朝さん、志ん輔さんに、新作落語の気鋭古今亭駒次さん、紙切りの林家正楽さん、曲芸のボンボンブラザーズという、近年にないバラエティー豊かな顔ぶれに。

 歴史ある会も“マンネリ化”は避けられず、客足が減少。立て直しを託された志ん輔さんが思い起こしたのが、持ちネタが受けて満足していた若手に「戦っていないね」と意見した師匠、故古今亭志ん朝さんの姿だった。「自分とも人とも本当に戦っていれば、熱はお客さんに伝わるはず」

 浅草演芸ホールで毎年10月に開催する若い世代中心の落語企画に、今年は若手の浪曲師と活動弁士を加える。

 軽演劇や映画、ストリップと、かつて多様な芸があふれていた浅草。志ん輔さんも前座の頃、寄席の近くで、人情喜劇の「デン助劇団」の公演が続いていた町に漂う独特の「におい」を感じていた。そんな空気を知る世代の客に、若手の精いっぱいの戦いに触れて「まだまだ。でもまた来ようかな」と思わせたい。そしてこのパッケージを金沢へ、全国へ。「それが狙い」と笑みを浮かべた。

 8月には愛知県東海市で、志ん朝さんの尽力で浅草演芸ホールの夏の風物詩となった「住吉踊り」を、地元の踊り手と共に披露する。「におい」が根付くことを、志ん輔さんは願っている。


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