花街の文化を残したい 東京・新橋花柳界に2新人

「汐汲」を踊る小蝶さん(左)、「潮来出島」を踊る加奈さん=東京都内

 江戸末期からの歴史を持つ東京・新橋花柳界には現在、約50人の芸者が所属する。その新橋芸者に昨年、地方出身の新人2人が加わった。長崎市出身の小蝶さん(22)と、金沢市出身の加奈さん(19)だ。

 小蝶さんは「自分にしかできない、ずっと学び続ける仕事をしていきたかった」、加奈さんは「花柳界という日本の伝統文化を残していきたい」と、それぞれ思いを語る。

 3月中旬、若手芸者が日頃の稽古の成果を見せる会が東京・銀座で開かれた。小蝶さんが披露したのは長唄「汐汲」。舞台を力強く踏みしめ、つややかに堂々と踊った。一方、加奈さんはしっとりした俗曲「潮来出島」に乗せ、扇子を上手に扱いながら、きれいに形を決めた。

 2人とも現役芸者である母親に憧れを抱き、芸者を志した。小蝶さんの母は長崎市の丸山芸者、加奈さんの母は金沢市のひがし茶屋街の芸妓だ。

 小蝶さんは高校卒業後3年間、企業で事務の仕事をしていたが、将来に悩んだ。母親の助言もあり「『芸の新橋』と呼ばれる、高いレベルを持つおねえさん方と修業しようと決意した」と話す。

 新橋芸者は、昼は踊りや長唄など芸事の稽古、夜はお座敷でお酌をしたり、芸を披露したりして、客をもてなす。加奈さんは上京前に「(修業の厳しさに)死にたくなったら帰ってきてもいいよ」と、母に声を掛けられた。ただ、その言葉は「自分の道を頑張って進め」という意味に捉え、励みにしている。

 新橋芸者の年に1度の晴れ舞台「東をどり」で、2人は今年5月、デビュー予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により公演が中止に。しかし、めげることなく、置き屋などで踊りや三味線の稽古を積む。大舞台に立つその日を目指し、精進していくつもりだ。


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