童謡を次世代へ、学会創設 雨情の作曲コンクール開催

日本童謡学会の会見に出席した松尾一彦さん(後列左)、野口不二子さん(前列中央左)、海沼実さん(同右)ら=東京都内

 童謡を次世代へ歌い継ごうと、歌手や研究者らが昨年、日本童謡学会(東京都新宿区)を創設。今春から詩人野口雨情の詩に曲をつける作曲コンクールを開催するなど、普及や研究に向けた活動を本格化させた。

 同学会理事長で、長年合唱団などで童謡の指導をしてきた音楽教育家の海沼実さんは「童謡は想像力をかき立てる作品が多い。心にとっておやつのような、栄養を満たしてくれるもの。子どもたちに、創作当時に込められた思いを大切にしながら、伝承していきたい」と話す。

 同学会は、北原白秋らが童謡を発表した雑誌「赤い鳥」の創刊100年に当たる昨年7月に創設された。昨今、幼稚園や保育園などの教育現場以外では童謡を歌う機会が激減しており、海沼さんは「風前のともしび」と危機的状況を訴える。

 「七つの子」や「シャボン玉」を生み出した雨情の詩に曲をつける作曲コンクールは、プロ・アマ問わず、8月末まで作品を募集している。審査員を務めるのは、雨情の孫野口不二子さんや、NHK「みんなのうた」で放送された童謡の作曲も手掛けた元「オフコース」の作曲家松尾一彦さんらと、力が入る。

 今後は、童謡を使った音楽療法で高齢者の心身ケアをする「童謡セラピスト」の養成や、童謡に関するデータベース構築なども計画している。

 名誉理事に就任した、落語家の故初代林家三平さんの妻でエッセイスト海老名香葉子さんは1月、都内で開かれた会見で、戦災孤児となった自身の経験を踏まえて思いを語った。「私は童謡や唱歌によって生き永らえました。歌は人の心を優しくしてくれます。(雨情ら)先生方がつくった童謡を永遠に歌い継がなくてはいけない」


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