研さんの場、今に受け継ぐ 旧東京音楽学校奏楽堂

シャンデリアが輝くホール=東京都台東区

 東京都台東区の上野公園の一角にある国の重要文化財、旧東京音楽学校(現東京芸術大)奏楽堂は、明治期に日本初の西洋式音楽ホールとして建てられ、滝廉太郎や山田耕筰も舞台に立った。耐震補強などを終えて昨年11月にリニューアルオープンし、若き音楽家の研さんの場として受け継がれている。

 今年1月中旬、「芸大生による木曜コンサート」が2階にあるホールで開かれた。大学院声楽科の院生らが、300人以上の満員の観客を前に、ドイツ歌曲を披露した。

 同コンサートは13年4月からの休館中は他の場所で開かれこの日で351回目。メゾソプラノの吉成文乃さんは木のぬくもりを感じる館内やレトロなシャンデリアを見回し「空間の装飾が気持ちを盛り上げてくれた。お客さんとの距離も近く親密さがある」。バリトンの歌声を響かせた阿部和磨さんは「偉大な先人たちが演奏し、日本の西洋音楽史の中で象徴的な場所。自分たちが歌えるのは光栄」と感慨深げだ。

 1890年、東京音楽学校の校舎として建造。老朽化により取り壊しや都外への移設も検討されたが、1983年に区に譲渡され今の場所に移された。かわらぶきの洋館で、遮音のために壁の間にわらを詰めるなどした建造当初の仕様を踏襲している。

 「今どきのホールと違い窓が多く、夏はセミの声がうるさいが、四季の移ろいも楽しめる」と学芸員の毛利誠さん。大正期の英国製のパイプオルガンも修理され、荘重な音色がよみがえった。

 ホールは一般の演奏会などにも貸し出され、1階展示室では東京音楽学校の卒業生で、「赤い靴」などの作曲者として知られる本居長世の直筆の楽譜などが見られる。月曜休館。


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