“非日常”の魅力生かす 多摩モノレールが20周年

立川市中心部を走る多摩都市モノレール=東京都

 東京・多摩地方を南北に走る多摩都市モノレールが開業20周年を迎えた。東大和市から買い物客に人気の立川市を経て多摩市までの16キロを36分で結び、1日当たりの平均乗客数は開業当初の7倍の約14万人に。高い所を走るため、バスや鉄道では味わえない眺望の良さも人気の一因だ。

 20周年当日の11月27日に行われた記念ラッピング列車の運行イベント。北端の上北台駅から乗り込んだ50組の親子連れは多摩川や高幡不動尊(日野市)の五重塔などを車窓から堪能し、南端の多摩センター駅で近くのサンリオピューロランドから駆け付けたキティちゃんと記念撮影した。

 東大和市の主婦は「いつも富士山が見える側の席に座る。遠くの桜や紅葉まで楽しめる」と笑顔。普段は通勤に使うという日野市の会社員は「川を渡る時の風景がお気に入り。気分良く仕事に行けます」と話す。平均速度は27キロと比較的ゆっくりで、車道よりはるかに高い上空を浮遊するような“非日常”感を味わえるのも魅力のようだ。

 こうした声を受け、運行会社「多摩都市モノレール」が新たに打ち出したブランドスローガンが「さ、いこう!な 見晴らしを。」。担当者は「地面から10〜22メートルある軌道の高さを生かし、車内からの景色を売りにしていきたい」と話し、富士山や立川市中心部のビル群などの見どころを案内するマップを作り、各駅での無料配布を始めた。

 都心と行き来する東西方向に比べ、遅れていた南北方向の公共交通の要として、モノレールは1998年に開業。2000年に全線開通した。

 JR中央線や京王線などと接続し、「中央大学・明星大学駅」ではキャンパスと直結。立飛駅前には大型商業施設「ららぽーと」が進出するなど、通勤通学や買い物など日常の足として地域に定着したが、「眺望の良さ」は観光路線としての潜在力も秘める。

 観光政策に詳しい帝京大の大下茂教授は、複数の自治体が連携して観光振興に取り組む上でも「高尾山や奥多摩などへアクセスする鉄道を縦につなぐモノレールが果たす役割は大きい」と話す。その上で「車内から下をのぞける窓を設けて空中散歩の気分が味わえるようにしたり、キティちゃんのラッピング列車を運行したりすれば訪日外国人も呼び込めるのではないか」とモノレール自体の魅力アップに期待を寄せている。


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