【千葉魂】収穫に悔恨、飛躍の4年目 柿沼「物おじすることなく冷静」

今季は自己最多34試合に出場し、初安打と初本塁打も記録した柿沼=ZOZOマリン
今季は自己最多34試合に出場し、初安打と初本塁打も記録した柿沼=ZOZOマリン

 気持ちの変化が飛躍のキッカケとなった。11月28日にZOZOマリンスタジアムで契約更改会見に臨んだプロ4年目、柿沼友哉捕手の表情は明るかった。今季はプロ初安打を記録するなど自己最多の34試合に出場。その存在を1軍首脳陣に知らしめた。育成選手として入団して、これまでの3年間でわずか10試合の出場。背水の陣で挑んだ今季も当初は、なかなか結果が伴わなかった。目標としていた開幕1軍を逃した時に新たな境地に達した。それは焦る自分、落ち込む自分と向き合い、自分の考え方を変えることだった。

 「これまでの自分はライバルである他の捕手の事を考えたり、周囲の自分への目が気になったりと周りの事ばかりを意識していました。でも、それでは駄目だなと。自分のできることをやろうと思うようにしました。自分自身をコツコツと強化していこうと思いました。気持ちの持ちようの変化で開幕2軍でも自分を見失うことなく落ち着いてプレーをすることができました」

 周りではなく、自分と向き合うと不思議と周囲が冷静に見えるようになった。それはグラウンドでも同じ。マスクをかぶっている際、冷静に状況を分析できる自分がいた。結果的に心の持ちようの変化が1軍昇格のチャンスを得た時に好影響をもたらすことになる。2軍でコツコツと結果を出し、5月25日についに1軍から声が、掛かる。

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 「物おじすることなく冷静」。1軍昇格した柿沼は周囲からそう評されるようになる。象徴的な試合があった。6月7日、敵地東京ドームでのジャイアンツ戦。4万5397人の大観衆が詰めかけていた試合で柿沼は思わぬ形で出場をすることになる。八回の攻撃で2番手としてマスクをかぶっていた吉田裕太捕手が走塁の際に足を故障し退場。ベンチに残っている捕手は残り1人。急きょ出番が回ってくる。その裏の守り。1死一、二塁のピンチでジャイアンツは重盗をしかけてきた。通常は躊躇(ちゅうちょ)なく三塁に送球する場面だが冷静に見極めた。二塁走者と一塁走者のスタートを瞬時に見極め一塁走者のスタートが少し遅れたと判断し二塁に投げ、見事に刺した。結果は三振併殺でチェンジ。ピンチを切り抜けた。このプレーで評価を勝ち取るとスタメンマスクをかぶる機会も徐々に増えていくことになる。

 冷静さを象徴するもう一つの試合は8月6日のZOZOマリンスタジアムでのホークス戦だ。先発の岩下大輝投手が足を痛めるアクシデントで1イニングを投げ終わったところで降板。ミーティングで練られたゲームプランが序盤で全くの白紙に転じた中でも冷静に投手陣をリードした。

 「本来なら事前のゲームプランに沿って打者の傾向やウィークポイントをしっかりと考えながら抑えるリードをしますが、この日は緊急事態でどんどん投手が代わるので、その投手の1番いい球でガンガン攻める方がいいと方向転換しました。いい結果となりました」

 7人の投手をリードし延長十一回、4-2でサヨナラ。捕手冥利に尽きる勝利だった。かくして1軍昇格後、ガムシャラにアピールする日々が続いた。しかし充実したシーズンは突然、悔しい形で終わりを迎える。9月1日のバファローズ戦(ZOZOマリンスタジアム)で左手に死球を受けると4日に病院で骨折の診断が下る。即、1軍登録は抹消となった。

 「チャンスを逃すまいと最初は我慢していましたが投手のボールもミットでしっかりと受けることができないですし、打撃でも打った瞬間に痛くて手が離れる。これではチームに迷惑をかけると思い病院に行きました。めちゃくちゃ悔しかったです」

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 抹消となった9月4日。熾烈(しれつ)なCS争いを繰り広げていたチームは本拠地にファイターズを迎えてのナイターが行われた。同点で迎えた九回に試合を決めたのは同じ捕手の田村龍弘。左翼に豪快なサヨナラ本塁打を放った。柿沼はその瞬間を自室のテレビで見た。

 「もちろん悔しいです。でもチームには勝ってほしいし、いろいろとこの機会に勉強しようと思いました。ベンチからでは分からないこともあった。発見は多かった」

 だから毎試合、ナイターを観戦し、ノートに気付いたことを書き込んだ。9月下旬に予定よりも大幅に早く実戦復帰を果たしたがチームは4位でシーズン終了。残念ながら再び1軍の舞台に戻る事はなかった。それでも柿沼は前を向く。今季、得た手応え。そして左手をギブスで固定しながらテレビにかじりついて書いたノートが来年の糧となると信じている。ドラフトで即戦力捕手も入団し、さらに競争が苛烈となるマリーンズの捕手陣。その中で存在感を示し、勝ち抜くために、強い気持ちと冷静な判断でマスクをかぶる。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)



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