町内外へ201戸が移転 町の7割以上が騒音下 空港と歩む・芝山町 【ナリタ30年 地域と空港】

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 航空機が近づくと屋外での会話は一時中断、遠ざかるにつれて再開する―。騒音下の芝山町で繰り返される日常光景だ。騒音障害を未然に防ぐため土地利用に関して規制などの措置を講ずる「特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法」(騒特法)の防止特別地区(80WECPLN以上)の指定により、移転補償が受けられる対象は二百三十四戸。これまでに二百一戸が移転したが、三十三戸は今も同地区内で暮らす。

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 A滑走路(四千メートル)の飛行コース直下、芝山仁王尊・観音教寺の“おひざ元”の芝山地区は防止特別地区に当たり、補償対象三十七戸のうち三十戸が新たな土地へ移った。かつては民家が立ち並んだ表参道だが、今は長屋門が残るだけだ。

 諸堂、伽藍が建つ寺域のうち、移転補償の対象は庫裏だけ。住居部分は防音工事済みだが、寺の日常業務や諸行事は騒音下で行われる。住職の浜名徳永師(79)は「寺の歴史のほか過去、現在を問わず寺を支えてくれた信徒のことを思うと他の場所へ移ることなどは考えられなかった」と語り、父親から引き継いだ古刹を守る。「過去を学ぶことから新たな文化を創造していくためにこの地を離れることはできない」とも述べ、騒特法の規制下でも可能な門前町の復活に思いを寄せる。

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 集団移転は、旧来の地域から比較的近い場所に移り新たな村落共同体を形成するケースが多く、騒特法に基づく集団移転では町外はないという。ただ、個別移転は町外もあり、町外、町内の割合は「ほぼ半々」(成田空港会社)という。

 町は、集団、個別の区別なく、移転しようとする住民に町内に残ってもらうため、防音サッシの差額補助と空調機器の継続補助(移設、更新)を内容とする「移転再建補助事業」を一九九七年度にスタートした。これまでの補助実績は八十八件で、人口流出を防ぐための施策は「一定の効果を上げている」(町環境空港対策課)ようだ。

 こうした施策は町面積の七割以上が騒音下にあることの裏返し。実際、芝山地区の十一戸が集団移転した小池元高田地区(芝山台)も「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」(騒防法)第一種区域(75WECPLN以上)に当たり、騒音下の生活は続く。