共生へ外資規制は必要 完全民営化に向けて ヒースローを他山の石に 【ナリタ30年 地域と空港】

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 成田国際空港会社(NAA)は、二〇〇九年度を目途に株式上場による完全民営化を目指してきた。上場に当たって、国土交通省は安全上の理由から「外国資本による支配を防止することが必要」として、NAAの完全民営化に伴う空港整備法の一部改正案に、外資規制を盛り込んでいた。

 ところが、外資規制について渡辺喜美金融・行革担当相が「日本が閉鎖的との印象を与える」などと発言するなど政府内部で異論が噴出。結局、三月に外資規制条項を削除した上で、同改正案を閣議決定、議論を先送りした。完全民営化についてNAAは「この問題で遅れそうだ」と話す。

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 NAAは、空港建設をめぐる闘争の歴史を踏まえ、警備費として毎年約百億円、騒音下住民に対する環境・共生費として昨年三月までに計約三千二百九十一億円を支出している。

 外資規制をせず、NAAが外国企業に買収された時「ヒースロー(英国)のように経営重視の経営者になると、成田の警備費や共生費をカットしてくるかもしれない」と心配する。

 ヒースロー空港を運営していたBAA(イギリス空港会社)は、スペインの建設大手会社フェロビアルに買収され、〇六年八月に上場廃止となった。

 買収直前の同年三月までBAAに出向していた、NAA給油事業部事業グループの菅野浩一さん(35)によると、同年二月八日に買収の憶測がマスコミで報道され、同日夕方からBAAはメールなどで社員の沈静化を図る一方、「発言には注意するように」とかん口令を敷いた。

 英国のマスコミは当初、買収で競争が進み、空港使用料が下がるなど好意的な論調で報道していた。ところが、BAA時代の同僚と今年四月に再会したところ、経営を重視する株主は空港に現れることはなく「投資を抑制したため、施設に故障が多い。スタッフも削減された。現場やお客さまの立場からみれば悪くなっている」とこぼしたという。

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 一橋大学大学院の山内弘隆商学研究科長は卸電力大手、電源開発(Jパワー)の買収防衛に政府が乗り出した例を挙げ、「空港の問題は原子力ほどじゃないが、説得力はある。成田の外資規制にアレルギーはない」と肯定的だ。

 ただ、政府与党内の混乱については「ミエを張っているだけ。研究者からすると、政治的な話で航空政策がゆがむのは問題」と疑問を投げかけた。