濁流に車、茂原署員が決死の連携 間一髪、高齢ドライバー 【房総豪雨】

コンビニから避難する市民=10月25日午後、茂原市早野(茂原署提供)
コンビニから避難する市民=10月25日午後、茂原市早野(茂原署提供)

 千葉県内に甚大な被害をもたらした記録的な豪雨から8日で2週間がたった。河川氾濫により各地で浸水が発生した茂原市などの長生地域を管轄する茂原署(板垣和也署長)には、200件を超える110番通報があり全署を挙げて対応した。市内では巡回中の交通課員2人が高齢ドライバーを乗せたまま濁流に流されていく軽ワゴン車を目撃した。沈みゆくワゴン車に飛びつき決死の連携。まさに間一髪の救出劇となった。

 先月25日午後3時すぎ、道路状況の調査のため管内を巡回していた交通課の森和義警部補(51)と川名和宏巡査部長(59)は、茂原市の早野地区で県道が冠水し、コンビニに市民が避難しているのを見つけた。

 水は店内に入っても膝下くらいまで押し寄せてきた。駐車場に止めた車ももはや動けない状態だ。

 その時だった。店の前を濁流に流されていく1台の軽ワゴン車。運転席には高齢とみられる男性が乗ったまま。車の前部分は完全に水に浸かり、自力では脱出できそうにない。

 駆け寄った警官2人は沈みゆくワゴン車のドライバーに懸命の声掛けをするが、水圧で重みを増したドアはなかなか開かない。なおも流される車に足を掛けて懸命にノブをこじ開け、強引に男性を車外へと助け出した。

 救出される直前、男性は運転席でたばこに火を付けようとしていたという。九死に一生を得た男性は振り返った。「最後の一服のつもりだった」。まさに間一髪の救出劇だった。

 水の勢いはその後も衰えない。警官はコンビニの客や店員を少しでも高い所へ誘導。日が落ちる中、足の不自由な高齢者はおぶって避難所に移動させた。

 今回の豪雨では、車で移動中に被害に遭い死亡したケースも多かった。森警部補は「胸まで水が漬かっても歩くことはできる。自分の身を守ることが第一」と指摘。川名巡査部長も「暖かい車の中にいたいという気持ちは分かるが、手遅れになる」と警鐘を鳴らした。

 豪雨から2週間が経過したが、交通課の多忙な日々は続く。管轄する長生郡市内で崖崩れが起きそうな危険箇所を調べたり、道路の完全復旧を見届けるまで災害対応は終わらない。


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