部活負担減へ外部顧問 “切り札”も人材確保の壁 長時間勤務の教員 【働くカタチ ちば、改革法の行方】(5)

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7月から小見川中学校カヌー部の顧問に就いた部活動指導員の浅井さん(左)。夏休み中も指導に当たった
7月から小見川中学校カヌー部の顧問に就いた部活動指導員の浅井さん(左)。夏休み中も指導に当たった

 「もっと引きつけて脇を締めて。肩の力を抜く! 背中が丸まっているよ」。8月下旬の朝、香取市小見川地区の黒部川。パドルをこぐ市立小見川中学校のカヌー部員たちにメガホン越しのアドバイスが響く。

 川岸やボート上から要点を突いた指導を重ねる声の主は、7月に顧問となった浅井慎平さん(24)。同部OBで競技歴も長いが、教員ではない。本年度から千葉県内公立中で試行導入された「部活動指導員」だ。

 昨年の抽出調査で、県内公立中教員の66%は月間換算の残業が80時間(過労死ライン)を超えており、その要因は「部活動指導」が最多。小見川中も34人全員が部活に携わる。

 全国大会常連の同部。一方、指導教員は異動がある。副顧問で数学教員の斎藤忠則さん(58)は赴任した昨年度から練習の安全管理を担当するが、今年4月、経験の長い顧問教員が他校に移って1人体制に。自身はカヌー未経験で技術指導は「見よう見まね」。そこに新顧問が就任し「経験者が教えると部員の成長も早く、助かる。私が休みでも指導できる」と心強い。

 浅井さんは水上スポーツの普及・体験の指南役として近くの市施設で臨時職員を兼務。地元カヌークラブのコーチも務めており、元々教え子の部員が多い。「(教員と)良い役割分担になれば」と意気込む。

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 県教委によると、指導員は現状、同市、南房総市、酒々井町、四街道市の計12中学校が総勢15人を採用。陸上や野球などの運動部だけでなく、吹奏楽、文芸部にも導入された。ただ、予算で用意した枠(30人)の半分。事前調査では6市町が採用を希望していた。

 人件費(国と県が3分の1ずつ補助、残りは市町村負担)の確保に加え、適任者探しが難航しているという。従来の外部人材は「補助」の立場。しかし、指導員は顧問の役割が原則。試合の引率、勝敗の責任を負い、指導方法を巡って保護者から注文も。二の足を踏む人が少なくない。

 文部科学省は、教員負担軽減の切り札として指導員を来年度、全国で1万2千人配置(本年度予算は4500人分)する方針だが、人材確保の難しさは既に表面化。配置を目指す県内郡部の自治体からも「年配の教員OBを軸に探すしかない」との声が上がる。

 少子化で生徒や教員が減っても伝統の部活は簡単になくせない。学校運営面では保護者や住民の力を借りる場面がむしろ増加。ミスや不祥事には厳しい目が注がれ「何事にも報告を求められることが多くなった」(ベテラン教員)。長時間勤務の是正が進まない理由は部活以外にもある。

 働き方改革法の号令を受け、本年度中に過労死ライン超えの解消を目指し、学校業務の思い切った見直しも求めた県教委の行動計画は目的を記す。「教職員が心身ともに健康を保てる環境を整え、子どもたちに真に必要な、効果的な教育活動を行う」。自分だけでなく、誰かのためでもある仕事。両立へ模索が続く。

◇千葉県内教員の長時間勤務と部活動指導 昨年度調査で公立中の運動部活時間は全国最長。県教委は今年6月、週2日以上(土日も1日以上)の休養日を設け、練習は平日2時間、休日3時間程度に抑制する目安を通知した。これに沿い、従来は4時間以上からだった土日祝日の部活指導教員手当を2時間から支給する条例改正案も9月県議会に提案した。2~4時間の手当は1日1800円に設定。