千産千消の地酒を 若者が若者に発信 魅力発信、強力な援軍 次々とアイデアを実現 【記者町香菜美が行く 酒処ちば巡り 第2部 独自路線でファン拡大】(6)

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千葉日本酒活性化プロジェクトで造った酒を披露する林さん=茂原市内
千葉日本酒活性化プロジェクトで造った酒を披露する林さん=茂原市内
「日本酒を広めていきたい」と語るSakeBaseの宍戸さん(左)と土屋さん=千葉市内
「日本酒を広めていきたい」と語るSakeBaseの宍戸さん(左)と土屋さん=千葉市内

 「酒ファン」獲得に奮闘するのは蔵元だけではない。県産米を使った酒で“千産千消”に取り組むプロジェクトを立ち上げた女性や、「日本酒を広めたい」と全国の酒蔵を駆け回り県内での消費につなげようと奮闘する若者2人も。

◆千産千消の地酒を

 「こんなにおいしいのに」…。茂原市で飲食店を経営する林紀子社長(45)は、県内日本酒の知名度不足を感じていた。県内では、酒造好適米を作る農家も県産米を積極的に使う蔵も少ない。「千産千消の日本酒で、千葉に人を集めるきっかけを作りたい」と思い立った。

 県産米を積極的に使う「木戸泉酒造」(いすみ市大原)に声を掛け、「藤平酒造」(君津市久留里市場)と「東灘醸造」(勝浦市串浜)が加わり「千葉日本酒活性化プロジェクト」を2014年に立ち上げた。

 県産米を使った特別純米酒の醸造から始め、ネット上で資金を集めるクラウドファンディングも活用。協力者には、いすみ市の酒造好適米「五百万石」の田植え体験に招くなど千産千消に力を入れた。

 収穫した米を使い三つの蔵元がそれぞれ「限定酒」を醸造。「木戸泉酒造」はしっかりとした味わい、「藤平酒造」はフルーティー、「東灘醸造」はキレがありすっきりとした味わいに仕上がった。林さんは「同じ条件で造った異なる味を楽しんでほしい」。

 ただ、認知度アップへの壁は厚い。県内で開かれたアジア最大級の食品見本市で、県外の来場者から「千葉にも酒蔵があるんだ」と驚かれた。認知度の低さを痛感させられたが、試飲すれば「おいしい」という反応に手応えもつかんだ。

 今は、さらなる夢を抱いている。「県内独自の酵母を使った酒を造りたい」。県内独自の酵母を使えば千産千消にさらに近づく。「本物の千産千消の酒を造り、県内の旅館などに置いてもらえればもっと知名度は上がるはず」。千葉の酒の価値を上げ、積極的に発信する。その活動を一歩ずつ着実に進める。

◆若者が若者に発信

 千葉市内の事務所に、全国の酒瓶がぎっしり。「これもおいしい」「でもこっちもお薦めかな…」。各地の酒蔵200以上を駆け回った宍戸涼太郎さん(22)と土屋杏平さん(22)が魅力を語る。

 小学校からの幼なじみの2人は昨年4月、日本酒の情報発信に取り組む営利団体「Sake Base」を立ち上げた。学生時代に県内全ての蔵元、全国の酒蔵を回って後継者不足、販売量の減少など“日本酒の危機”を実感。「若い人や日本酒を飲まない人に魅力を伝えなければ」

 若者に発信するキーワードは「分かりやすさ」。毎月習志野市で立ち飲み酒屋「日本酒パーク」を開き、コップ1杯500円で自ら足を運んだ蔵元の酒を飲み比べてもらう。

 「酒を飲むきっかけが見た目でも…」と、蜂蜜とレモンを加えたカクテル風や花びらに見立てたリンゴを浮かべた“変わり種”の日本酒も並べる。

 定期開催する「日本酒パーク」は50回以上を数え、当初50人ほどだった来客は、口コミで増えて毎月約400人訪れるまでに。団体運営が軌道に乗り、専念するため2人とも大学を退学。今年12月には千葉市内に酒屋を開く。各地の酒を販売し「夜はバーカウンターでちょい飲みができるようにしたい」。

 将来は団体の株式会社化も検討。「新しい飲み方を提案して、日本酒を飲む入り口としたい」と話す。

 酒の「造り手」ではない人たちも日本酒の魅力発信に積極的に関わる。「酒処ちば」の浸透に向けた活動は続く。

=第2部 終わり