令状GPS「違法性なし」 全国初判断 自動車盗で実刑 千葉地裁

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 千葉県警が全国で初めて裁判所の令状を取り、捜査対象者の車に衛星利用測位システム(GPS)端末を取り付けた捜査手法の適否を巡る自動車盗事件の判決で、窃盗罪などに問われた住所不定、無職、山本功一被告(44)に千葉地裁(野原俊郎裁判長)は30日、「重大な違法性があるとは言えない」として今回の捜査手法を認め、懲役10年、罰金30万円(求刑懲役12年、罰金50万円)を言い渡した。弁護側は「GPS捜査で得られた証拠は違法だ」として無罪を主張していた。

 弁護側によると、令状を取ったGPS捜査の適法性を巡る初の判決。最高裁は昨年3月、令状なしのGPS捜査は違法と初判断しており、令状取得の捜査も「疑義がある」として立法措置を求めていた。

 野原裁判長は判決理由で令状を取ったGPS捜査について「GPS捜査を想定した令状はなく、必要性を考慮したとしても違法の疑いがある」と指摘しながらも、今回の捜査は「最高裁判決前に実施され、警察官は令状の有効性を信頼していた。令状に従って捜査し令状主義を潜脱(せんだつ)する意図はなかった」と、捜査が適正に行われたと判断した。

 山本被告の弁護士は判決後、控訴を検討するとし、「(GPS捜査は)運用をコントロールできる措置が必要だ」とコメントした。公判では、令状を取得した過程にも重大な違法性があるとして、関連証拠の排除を求めていた。

 判決によると、仲間と共謀し2016年9~11月、県内や埼玉県で車両計4台を盗むなどした。捜査員は令状を取り、被告らの車両にGPS端末を取り付けた。

 当初、公判でGPSの情報は証拠として扱われていなかったが、山本被告が「捜査で使われた」と述べたため、地裁が昨年12月の判決言い渡しを延期。検察側にGPS捜査の資料提出を求めた。

◆ GPS捜査 衛星利用測位システム(GPS)端末を捜査対象者の車などに取り付け、追跡する捜査。警察庁は2006年、連続窃盗や誘拐事件を対象に、追跡が困難な場合などに実施できると通達し、令状の必要がない任意捜査と位置付けていた。だが、最高裁は17年3月、プライバシーを侵害し、令状が必要な強制捜査に当たると初判断し、現行法上では令状の発付にも「疑義がある」と言及。警察庁はGPS捜査を控えるよう通達した。千葉県警は16年、端末使用を事後的に本人へ提示するなどの条件で令状を請求していた。

◆「令状あれば」は危険
 GPS捜査を巡る最高裁判決で弁護団に加わった舘康祐弁護士の話 判決はGPS捜査に違法の疑いがあるとしただけで、違法性の詳細な判断を避けた。犯罪の重大性や高度な必要性が求められるとした最高裁判決の補足意見の指摘を踏まえ、今回の事案に即して具体的な判断をすべきだった。GPSに限らず、新技術に基づくさまざまな捜査手法がある中、捜査当局による「とりあえず令状を取ればいい」との判断につながりかねない危険な判決だ。強制捜査の在り方は法律で定めるという原則に立ち返るべきだ。