廃校再生、合宿・研修に 住民と宿泊者の交流も 長南町の宿泊施設 【古(いにしえ)を使ふ 千葉県内で受け継がれる建物・技術】(4)

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長南町立西小学校だった校舎を活用し、宿泊施設として順調なスタートを切った「ちょうなん西小」。小学校の名残が随所に見られ、「給食」風の食事を楽しんでもらう工夫も=7月、長南町
長南町立西小学校だった校舎を活用し、宿泊施設として順調なスタートを切った「ちょうなん西小」。小学校の名残が随所に見られ、「給食」風の食事を楽しんでもらう工夫も=7月、長南町

 1896年創立の長南町立西小学校。地域の子どもたちの学びと育ちの場だった校舎やグラウンドは昨年3月、120年の歴史に幕を下ろした。

 廃校となったものの、「ちょうなん西小」の名称で宿泊施設として生まれ変わり、地域住民や町外の大人たちを引き寄せる。

 今年7月にオープンしたばかりだが、早くも「3千泊分」の予約を受け付け、土日祝日は来年まで空きがないほどの人気に。運営する総合情報サービス会社「マイナビ」の横尾隆義さん(54)は「インターネットの口コミで、企業の研修や大学のサークル合宿などで利用が急速に増えている」と顔をほころばせる。

◆「非日常」を演出

 里山にぐるりと囲まれた約2万1千平方メートルの敷地にある同校。廃校は、少子化や過疎化という地域の課題を浮き彫りにした。ただ、同社は魅力を見いだしていた。

 「長南町は千葉県のほぼ中心に位置し、都心からも車で90分と近い。廃校の校舎を団体向け宿泊施設として活用すれば、活性化につながる」。同社の提案は町に受け入れられ、無償で旧校舎を借り受けた。

 「校舎を大きく変えては意味がない。廃校に泊まるという非日常感を演出したい」。教室を改造した宿泊室には黒板や黒板消しを残し、扉の上には閉校前の担任の名札を貼ったまま。児童の思いが詰まった卒業記念制作も閉校時の姿を引き継ぎ、見た目は学校施設そのものだ。

 宿泊室にも特色を出し、計7室のうち1階を洋室、2階を和室に改装。1室4~16人と宿泊者の人数や希望に応じて柔軟に対応し、最大84人が宿泊できる。夜でもサークル活動などで使えるよう、音楽室には防音設備。体育館やグラウンドも自由に使える。

 食事の際は白衣をまとい、皆で配膳と片付けを行う「給食スタイル」。小学校の雰囲気も味わってもらおうと工夫を凝らす。

◆地域住民に開放

 宿泊者だけではなく地域住民にも施設を使ってもらおうと、校舎の一部を「地域交流エリア」として整備した。午前11時~午後4時、図書室やベビールーム、カフェなどを地域住民に開放する。「正門玄関にカフェを配置して、入りやすいようにした。地域住民の利用も増えている」と、手応えを示す。

 オープンからわずか1カ月半だが、すでに地域活性化の「成功事例」として、県内外から複数の自治体が視察にやって来る。「廃校や古民家活用に対する期待値は日に日に高まっている」と分析する。

 横尾さんが課題と受け止めるのは「いかに町民と宿泊者の交流を増やすか」だ。盆踊りなど地域住民と宿泊者が交流できるイベントなどの仕掛けも用意する。

 かつて子どもの笑い声が響き渡った校舎とグラウンドは、大人たちにとって郷愁誘う憩いの場、地域住民にとって交流の場として、存在価値を高めている。

◇ちょうなん西小 長南町佐坪1348の1。茂原長南ICから車で約10分。基本宿泊料金は20人以上の予約で1人4千円、10人以上20人未満で4500円、10人未満で1団体5万円。食事料金は朝食500円、昼食800円、夕食1500円。問い合わせは(電話)0120(154)244。