「何が間違いか説明を」 否認の被告に父怒り 松戸女児殺害 初公判

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 当時9歳だったレェ・ティ・ニャット・リンさんの命が奪われてから1年2カ月余り。容疑者として逮捕されたリンさんが通う小学校の保護者会長だった渋谷恭正被告(47)の裁判が4日、千葉地裁でようやく始まった。渋谷被告は無罪を訴え、弁護側も犯人である可能性に疑義を主張。検察側はDNA型鑑定結果などを証拠とし、事件の計画性も強調した。裁判にはリンさんの父親も被害者参加人として参加。全面否認の渋谷被告に「(起訴内容が)間違いだというなら、何が間違いなのか説明してほしい」と怒りを込めた。

 「全て違います」。刑務官に支えられてゆっくりと立ち上がり、おぼつかない足取りで証言台に立った渋谷被告は、はっきりとした口調で起訴内容を否認した。

 逮捕時から黙秘や供述拒否を続けていたとされ、裁判長から起訴内容を問われると、事件に一切関与せず全てねつ造されたなどと、せき払いをしてやや早口に主張。背中を丸めながら「全面的に無罪を主張します」と裁判長を見上げた。

 昨年4月の逮捕時は短髪だった渋谷被告。この日は白髪交じりで後ろ髪が首の辺りまで伸び、ぼさぼさに。頬は少しこけたようにもみえ、眼鏡を掛け、黒色ジャージー、灰色の迷彩柄ズボン、水色サンダル姿でうつむきながら入廷した。

 渋谷被告はリンさんが通っていた小学校の当時の保護者会長。検察側が読み上げた見守り活動を共にした女性の供述調書では、リンさんが渋谷被告を信頼していた様子が浮かび上がった。

 登校時に渋谷被告を見かけるとリンさんは手を振り、ハイタッチをしていた。2016年11月ごろには1度、渋谷被告の軽乗用車にリンさんが乗ったことがあった。女性が孫と一緒に自宅まで送ってもらう際、たまたま近くにいたリンさんも同乗することになったという。ただ「リンちゃんはそれ以外、渋谷君の車には乗っていない」とした。

 検察側はリンさんの行方不明前日、渋谷被告が女性に「明日は(見守り活動に)行けない」と告げていたと明らかにし、事件の計画性を強調した。

 渋谷被告は検察側の証拠調べの間、椅子に深く腰掛け、時折眼鏡に触れて検察側に視線を向けた。机に置いたノートとペンが使われることはなかった。

 「花見しようね」。リンさんの母親、グエン・ティ・グエンさんの供述調書では、グエンさんがベトナムに帰国する前、リンさんと交わした約束が検察側から読み上げられた。

 ベトナムにたつ前、離れることを寂しく思ったのかリンさんが甘えてきた。グエンさんはまな娘にキスをし、抱きしめた。「今でも思い出すと涙が止まらない」

 知らない人に付いていってはだめ、家に入れてはだめ。しっかりと使い方を教えた青い防犯ブザーは遺留品に。「花見しようよ。桜散っちゃうから」。早く戻ってほしいと願う娘との約束は果たせなかった。張り裂けそうなグエンさんの思いが法廷に響いた。

 検察側の証拠調べの際、笑顔でピースサインをする生前のリンさんの写真がスクリーンに映し出された。渋谷被告は顔を少し上げゆっくりとまばたきをした。ただ、表情を変えることはなかった。