世界大会「金」に感涙 10年ぶり敗戦で歩形改良 マスターズ陸上「競歩」国内無敵・米澤清彦さん(78)=船橋市= 【2018年も鉄人達人】(1)

  • 0
  • LINEで送る

ずらりと並ぶ優勝メダルに囲まれ、世界マスターズ陸上大会の金メダル(左)と、10年ぶりに国内で敗れ、歩形改良を決意した銀メダルを掲げる陸上・競歩の米澤さん。出場大会の記録を手書きした一覧では、優勝レースを赤丸で囲み、唯一敗れた14レース目は黒色でチェック=船橋市内の米澤さん宅

 連戦連勝。マスターズ陸上「競歩」の国内大会で、無敵を誇る鉄人・米澤清彦さん(78)=船橋市。21試合に出場した2017年、思いがけない結果で忘れられない2レースと出合う。

 「運にも味方されてね。8位入賞が目標だったのに、金メダルを取れた。望外の結果」

 昨年3月、韓国テグ市で行われた世界マスターズ陸上大会。初の国際大会参加だった。75歳以上80歳未満の「10キロロード競歩・M75」にエントリー。まず、強豪の中国、韓国選手が出場を見送る運が舞い込む。

 当時のレース展開は、約9カ月経った今も鮮明に浮かぶ。「あの日は寒く、息を強く吐き出すことだけ考えた。スイスの選手とデッドヒートを繰り広げ、残り2キロでスイスの選手が反則を取られて一気に減速。最後は引き離した」。スイス選手が失格を恐れて2位確保に作戦変更したとみられ、これも幸運だった。

 国内外の選手らに祝福されゴールイン。「表彰式で君が代が流れ、日の丸が揚がるのを見て涙が止まらなかった」。国際大会優勝の喜びに、存分に浸った。

◆パワーは限界に

 思いがけず「金」を手にした初の世界大会は、忘れられない喜びのレース。ところが約半年後「まさか」のレースが待ち構える。国内で無敵を誇った鉄人は無念の「銀」に終わった。

 微妙な判定があり、チーム関係者がクレームをつけたが、認められなかった。「負けは負け。10年負けなかったが、パワーに頼るのは限界だった」。大ベテランは、敗戦の悔しさを歩形改良の機会と受け止めた。78歳でのフォーム改良。決して簡単ではない課題に、果敢に挑んだ。

 新たな歩形は固まっていないが、敗戦後の大会で再び勝利を重ねた。3キロで19分台後半だったタイムも、19分台前半に。「今は18分台を狙っている。国内で同世代の18分台の選手はおらず、世界でもごく少数。世界ナンバーワンになれる」

◆掲げる2大目標

 地元・船橋で、松戸徹市長から「鉄人の上をいく超人だ」と絶賛される。身長167センチ、体重59キロ、体脂肪率10・5%。鍛え抜かれた体は、78歳という年齢を忘れさせる。

 「新年の目標は、全日本マスターズ陸上10連覇」。前年は台風で競技が中止となり、“大台達成”は持ち越しになっている。

 80歳以降の中期目標も明確。世界マスターズ陸上大会に再び出場し、上の世代の種目「10キロロード競歩・M80」で、「狙っての金」を目指す。

 鉄人の活動を陰で支えるのは、妻、恭子さん(73)。競技に真摯(しんし)に向き合う姿を見守ってきた。「実はレースを見に行ったことは一度もないの。報告を楽しみにしているから。でも、一度ぐらいはこっそり見に行こうかしら」

 何歳まで競技を続けるのか-。「親父が97歳で他界した。両親への感謝の気持ちを込め、97歳を超えても競技を続けていたい」。力強い超人の歩みは、確実に道の途中と言える。

(社会部・伊澤敏和)

       ◇       ◇

 その道を極め、さらに磨きをかけようと努力する「鉄人」、誰もが手の届かない域にいる「達人」…。2018年も変わらず高みを目指す千葉県内の鉄人、達人を紹介する。