
電通女性社員の過労自殺で社会問題化する長時間労働の解消に向け、千葉労働局が残業抑制に取り組む千葉県内企業の職場視察を始めた。9日には食品メーカー「キッコーマン」の野田本社(野田市)を訪問。時間外労働を減らすための工夫や多様な休暇制度について説明を受けた。今後は県内企業にモデルケースとして情報を提供し、県全体での過労撲滅を目指す。
視察は、11月の「過労死等防止啓発月間」に合わせて厚労省が行っている「過重労働解消キャンペーン」の一環。各都道府県労働局が働きやすい会社づくりに取り組む企業を「ベストプラクティス企業」に選び、独自の取り組みなどを調査する。
同社は、社員一人当たりの時間外勤務が平均10・7時間(2014年度)という実績や、県目標を上回る有休取得率などが評価された。
同日は、同社人事担当者らが「つわり休暇」や「介護休暇」など多様な休暇制度を紹介。また、今月から導入した、1時間単位で申請できる「時間単位年休」もアピールした。担当者は「社員も経営陣も時間を有効に使おうという意識が高い。ノー残業デーは一斉消灯するため、社員は時間内に仕事を終わらせようと、時間配分を自ら意識している」と話した。
また、女性社員が結婚、出産後も働き続けられるよう考慮。育休中などは社内状況をこまめに連絡するほか、自宅で仕事ができる在宅勤務制度を来年4月から本格的に導入する予定という。
労働組合の担当者も同席し、「新制度を導入する際は、相談を重ねて合意の上で実行されている。会社側とは良い関係が築けていると思う」と話した。
視察を終えた同局の福沢義行局長(59)は「労使のコミュニケーションが機能しており興味深い。訪問の結果は今後、インターネットなどを通じて公表し、県内企業の働き方の文化を変えて、過重労働をなくしていきたい」と感想を述べた。
同局では今後も引き続き、勤務環境の改善に積極的な企業への訪問を実施していく。