コウノトリで町おこし 保護と“一石二鳥”狙う ブランド米、観光誘致に力 野田市など

 国の特別天然記念物コウノトリの保護活動を町おこしにつなげようという動きが広がっている。日本初の人工繁殖と放鳥に成功した兵庫県豊岡市に続く形で、野田市や福井県越前市などが飼育と共に、農産物のブランド化や観光客誘致に取り組んでおり「一石二鳥」を狙う。

◆意欲

 日本のコウノトリは、1960年代の農薬の多用で、餌となるカエルやドジョウが減少したことなどが原因で71年に絶滅した。

 野田市は2012年に飼育を始めた。市内にある飼育施設では、ガラス越しに生態を観察でき、ボランティアが案内してくれる。13年の一般公開開始以降、県内外から約3万人が訪れており、自治体関係者の視察も多いという。

 市内では減農薬米づくりや耕作放棄地の整備に力を入れており、農産物販売所を営む関根生夫さん(70)は「見に来た大勢の人たちに買ってもらえるような加工品の生産や販売にもつなげたい」と意欲を見せる。

 最初にコウノトリで町おこしを始めた豊岡市には、研究・繁殖施設のある公園に毎年約30万人が訪れている。周辺には減農薬米を使った菓子やキャラクター商品を扱う店が並び、休日は観光客でにぎわう。

◆付加価値

 「また戻ってこいよ」。昨年10月、福井県越前市白山地区の田んぼで、県が2羽のコウノトリを放鳥、同地区で農業を営む恒本明勇さん(69)ら地域住民が見守った。卵を豊岡市から譲り受け、越前市内の飼育施設でふ化させた。今年も新たに放す予定だ。

 同地区でもコウノトリは1970年以降姿を消した。「優雅に舞う姿をまた見たい」と、2009年、恒本さんら農家の有志が餌場となる水田の整備や無農薬米の栽培を始めた。コメは「コウノトリ呼び戻す農法米」と名付けて全国に売り出したところ評判に。

 JA越前たけふによると、農薬を使った同種米と比べ、出荷額が60キロ当たり約1万3千円高い2万4840円と高値にもかかわらず、昨年生産した42トンは完売。幅広い世代に人気があるという。「苦労も多いが、評価してもらえると、やる気が出る」と恒本さん。

◆独自色

 豊岡市で放鳥されたコウノトリが飛来、営巣した徳島県鳴門市も農産物の販売に乗り出す。

 名古屋大大学院の生源寺真一教授(農業経済学)は「商品の背景にある『一度絶滅したコウノトリの復活』というストーリーが消費者を引きつけやすく、経済的効果につながる」と話し、今後も同様の取り組みが各地で広がるとの見方だ。「横並びにならないよう独自色を打ち出し、リピーターを確保する工夫も必要になる」と指摘している。

◇コウノトリ

 コウノトリ科の渡り鳥で、国の特別天然記念物に指定されている。成鳥は翼を広げると2メートルにもなる。白と黒の羽根、赤い脚が特徴で、国内では明治時代以降、食用目的の乱獲や環境の悪化で減少。1971年に絶滅した。兵庫県が85年に旧ソ連から6羽を譲り受けて繁殖に成功し、2005年、同県豊岡市で初めて試験放鳥した。野田市や福井県越前市も飼育、放鳥に取り組んでおり、野外の個体数は徐々に増加している。


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