組み体操、千葉県内も“中止”の動き 柏が方針、松戸は議論 けが受診、年間8000件超

 運動会の花形種目「組み体操」の規制に踏み切る自治体が相次いでいる。児童や生徒の重大事故が減らないとして、文部科学省は年度内にも事故防止のための方針を示す考えだが、千葉県内では柏市が17日、けがの多い組み体操を中止する方針を明らかにしたほか、松戸市も全廃も視野に入れ安全対策の見直しを進める。「一体感が強まる」などと教育効果を挙げる関係者は少なくないが、組み体操が原因で、小中高生が災害共済給付を受けた件数はここ数年、毎年8千件を超え、うち骨折も2千件前後で推移。専門家や現場では即時中止や別種目への振り替えを求める声が上がる。

◆骨折や打撲

 柏市教育委員会が来年度から、市立小中学校の運動会で行われている組み体操の中止を検討していることが17日、分かった。25日の教育委員会議で正式決定、本年度中に市立小中学校全62校へ伝える。

 市教委指導課によると市内では本年度、計46校で組み体操を実施。児童や生徒が練習中に骨折や打撲を負い、病院に行ったケースが約40件あった。校長会から組み体操を実施しないよう要請する声が上がったという。

 対象は人を持ち上げたり肩に乗せたりする「ピラミッド」や「タワー」「サボテン」と呼ばれる組み体操。同課は「安全にできる体操は集団演技という形で取り入れられれば」としている。

 松戸市も、本郷谷健次市長が昨年12月、安全対策をまとめたガイドラインを策定するまでは組み体操を禁止するよう市教委に要請。策定の場合は校長会が年度内をめどにまとめる方針だが、組み体操を完全に廃止し、陸上競技を拡充するなどして対応する考えもあるという。

 同市立小中学校で本年度、組み体操でけがをした児童や生徒は計64人に上り、うち10人は骨折だった。昨年5月には「タワー」の練習中に最上部から転落した小学6年生の男子児童が頭部を骨折し、手術で一命を取り留めた危険なケースもあった。

 全国では大阪市教育委員会は昨年9月に「ピラミッド」は5段、「タワー」は3段までとする高さ規制を導入。今月には全国で初めて双方の禁止を決めた。

◆千葉市「学校が判断」

 馳浩文部科学相は9日の記者会見で「子どもの命に関わる問題で、重大な障害を負う事例が含まれている」とし、組み体操事故の状況を分析し、2015年度内に防止のための方針を示す考えを明らかにした。ただ、文科省の方針が規制や制約を含む内容になるかどうかは「分析してみないと分からないので、具体的にどこまで踏み込むかは言うべきではない」とするにとどめた。

 千葉市教委によると、市立小中学校で本年度、組み体操の事故で児童や生徒10人が腕や腰を骨折。保健体育課は「けがをした児童生徒がいたことを重く受け止めている」と話す一方、「組み体操の実施判断は学校が行うので、市教委として中止させることはない」という。

◆全体の1%は重度

 組み体操が原因で医療機関を受診した全国の小中高校生が医療費を受給した件数は、日本スポーツ振興センター(JSC)に統計のある11年度以降、4年連続で8千件を超えている。14年度は8592件で、負傷の内訳は、骨折が1457件、捻挫が1736件、挫傷・打撲が2398件などだった。

 組み体操の在り方の見直しを求めている超党派の議員が国会内で開いた集会で報告した、松戸市立病院の庄古知久救命救急センター長がJSCの資料を基に集計したところ、脊椎や骨盤などの重症骨折や、脊髄損傷、内臓損傷といった重度なけがが全体の約1%を占めるという。

 庄古氏は「組み体操はすぐに中止すべきだ。1メートル以上の高さから墜落して頭部をぶつければ、医学的に頭蓋内損傷をきたすといわれる。どうしてもやるのであれば、ピラミッドは3段まで、タワーは2段までにすべきだ」と述べた。

◆「団結力」強まる

 「団結力や一体感が強まる」として組み体操を楽しみにしている児童生徒や保護者は多いという。柏市教委の幹部も「団結力が深まるメリットがある」と認めながら「けがのリスクもある。その両面を判断して、市内の各校長が禁止を選んだ」と説明した。

 一方、名古屋市の公立小の60代の男性非常勤講師は「リスクゼロの運動はない」と強調する。JSCのデータでは、跳び箱事故での受給件数は毎年2万件超で、骨折も7500件前後。14年度はバスケットボールでの骨折も約2万4千件(部活動を除く)あり、危険なのは組み体操だけではないようだ。男性は「組み体操に限らず、やめる判断も、子どものチャレンジを手助けする指導も、ともに必要だ」と訴える。


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