「心神喪失」認め無罪 睦沢男性刺殺で千葉地裁

 睦沢町で2014年2月、井戸掘削会社社長、田中秀和さん=当時(61)=が自宅に侵入してきた男に刺殺された事件で、殺人などの罪に問われた住所不定、無職の男(64)の裁判員裁判の判決公判が16日、千葉地裁であった。金子武志裁判長は「被告が心神喪失状態だったとの合理的な疑いが残る」として、無罪(求刑・懲役10年)を言い渡した。

 公判で事実関係に争いはなく、男が統合失調症に罹患(りかん)していることから、病気が犯行に与えた影響の程度が主な争点になった。

 金子裁判長は判決で、犯行動機や犯行時の行動などを検討。犯行動機について「統合失調症による被害妄想の影響を強く受けており、それ以外の動機を考えることは不可能」と判示した。犯行時の行動に関しても「被害妄想による被害者に対する強い恐怖心のため、行動を制御することができない状態に陥っていたと推進できる」と指摘した。

 そのうえで「被害妄想や思考障害などの症状は深刻な状態だった。犯行が統合失調症の圧倒的影響下で行われたことは明らかで、善悪を判断する能力に従い行動をコントロールする能力が失われていた」と結論付けた。

 判決によると、男は14年2月3日未明、田中さん方に無施錠の窓から侵入。室内を物色後に寝ていた田中さんを見つけると、持ち込んだ刃渡り約27センチの刃物で胸などを多数回刺すなどして殺害した。井戸の掘削工事を依頼した際に払った手付金100万円をめぐり田中さんとトラブルになっており、統合失調症の影響から田中さんに殺されるとの被害妄想を抱くようになったという。

 検察側は被告は「病気に完全に支配されておらず、心神耗弱の限度で責任能力がある」と主張していた。

 千葉地検の金沢勝幸次席検事は「判決内容を精査し、上級庁とも協議のうえ適切に対応したい」とのコメントを出した。


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