“真犯人”不明のまま 客観証拠なく証言疑問 柏の強盗殺人で千葉地裁

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 柏市内で会社員、保田智さん=当時(31)=が盗まれた自分の車にはねられ死亡した事件。千葉地裁は9日、板橋雄太被告(30)に対して強盗殺人罪の成立を否定した。板橋被告は公判で一緒に車を盗んだ男の1人を“真犯人”と指摘したが、男はすでに窃盗罪での有罪が確定しているため、男を保田さん死亡に関して新たに罪に問うことはできないとみられる。保田さんのかけがえのない命が奪われたのは事実。真相が明らかになる日は来るのか-。

 同事件は2013年2月22日早朝に発生。柏市内の駐車場から保田さんの車が盗まれ、阻止しようとした保田さんが同車のボンネットから振り落とされ死亡した。事件から約10カ月の同年12月、板橋被告が同車を運転していたとして強盗殺人罪で、現場に一緒に行った男2人が窃盗罪でそれぞれ起訴された。

 事件後に車が袖ケ浦市内のヤードで解体されるなどしていたため、客観的な証拠がなく、公判では「板橋被告が車を盗み運転していた」とした男らの証言の信用性が焦点になった。

 高橋康明裁判長は判決で事件後の経過や男らの証言内容を慎重に検討。「男の1人から他の男に働き掛けがあり、虚偽の供述をしている可能性を否定できない」「男は自分の置かれた状況に応じて供述を変えていることがうかがえる」などと信用性に疑問を呈した。

 さらに、板橋被告がいったん自白した際の供述について、「現場に行った別の車の助手席から見た光景を、男性をはねた車の運転席から見たように話せば足りる内容。犯人でなければ話せない内容ではない」と指摘。「常識的にみて被告が運転していたと認められるほどの証明はなされていない。強盗殺人罪は成立しない」と結論付けた。

 板橋被告は上下黒のスーツで出廷。懲役6年の主文を言い渡された瞬間、大きな声で「ありがとうございます」と口にした。

 弁護側は判決後、「良い判決だった。証人らの話を丹念に検討していただいた。裁判官と裁判員に敬意を表したい」と話した。板橋被告は「ほっとした」と話しているという。