病院嫌いなペット 高齢飼い主の味方 自らの障害きっかけに転身 訪問診療獣医の西田幸太郎さん(市原市)

通院が苦手なペットを往診する西田医師(右)と母のえり子さん=市原市内
通院が苦手なペットを往診する西田医師(右)と母のえり子さん=市原市内

 ペットが病気やけがをしたときの通院は、飼い主にとって気が重い。人間と同じで、病院そのものと、移動手段である車が苦手な動物がおり、通院がストレスになったり、暴れて治療できず症状が悪化するケースさえあるからだ。最近は飼い主、ペットの高齢化も顕著だ。彼らを支えるのが往診獣医師。市原市の男性獣医師は自らの障害を契機に往診医へと転じ、県内を飛び回る。

 「フーッ」

 恐怖や緊張でうなる猫を、飼い主となだめながら診療するのは、市原市の往診専門動物病院「ホーム犬猫病院」の西田幸太郎医師(39)。

 西田医師によると、人間と同様に、犬や猫、そのほかの動物にも極度の病院嫌いがおり、暴れると検査や注射、投薬などの治療ができない。加えて病院まで行く際の“車酔い”があると、治癒目的の通院が逆にストレスとなり、病状が悪化するケースさえある。

 この日診療した猫も突然エサを食べなくなり、飼い主の主婦(45)が自宅から約20分のかかりつけ医に車で連れて行ったが、車内や院内で暴れ、治療らしい治療が受けられなかった。困り果て「もしかして自宅なら…」と西田医師に往診を頼んだところ、何とか点滴や注射ができ、1週間ほどで回復したという。

 車に乗らず、いつもの生活環境下で治療を受けられたことが功を奏した。飼い主の主婦は「どうしてよいか分からず、すがる思いだった。診察してもらえてよかった」とほっとした表情で話す。

 西田医師が往診医に転じた理由の一つは自身に降りかかった不幸。幼いころから動物好きで、大学で学び獣医師の夢をかなえ、動物病院に勤務していた10年前、脳腫瘍を発症。手術を受けたが後遺症が残った。

 手術ができなくなり、病院をやめ、一時は会社勤めもしたが、やはり大好きな仕事を諦められず復職を目指した。その際に選択したのが往診医。

 自身の体のことだけでなく、病院勤務時代に、病院嫌いや高齢による寝たきりなど動物側の事情に加え、妊娠中や小さい子どもがいる母親や高齢者ら、飼い主によっても通院が困難なケースを数多く見てきたのも決断の理由となった。

 2年前に開院。往診先への運転、診療のサポートは母、えり子さん(63)に頼んだ。地元の市原市や近隣の千葉市、東金市のほか、松戸市、川崎市などからも依頼があった。治療を受けられ「助かった」と泣き出す飼い主もおり、「喜んでもらえてうれしい。病気を治すことも大事だが、飼い主の不安を少しでも取り除くことが大事。病院に連れて行けず困っている多くの方を助けたい」と話す。

 手術や検査が必要な場合、今は知り合いの病院に依頼しているが、「血液検査など、もう少し詳しい診察ができる態勢を整えたい」と考えている。

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 基本料金は市原市ちはら台の自宅から距離20キロまで3千円、10キロごとに千円増(税別)で、プラス治療費。相談にも応じている。詳しくは同病院、電話080(2676)5529。休診日なし。


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