家康に贈られた西洋時計 蘭の職人、レプリカ製作に挑む 本県ゆかりの国重要文化財

家康に贈られた西洋時計のレプリカ製作に挑むヨハン・テン・ヒューブさん(共同)
家康に贈られた西洋時計のレプリカ製作に挑むヨハン・テン・ヒューブさん(共同)

 江戸時代に御宿町沖で遭難したスペイン船の乗組員を当時の大多喜城主らが手厚く保護したお礼として、スペイン国王から徳川家康へ贈られたぜんまい式西洋時計(重要文化財)のレプリカ製作にオランダ出身の腕利き職人が挑んでいる。

 時計は、同町岩和田沖で難破したスペイン船の乗組員を保護したお礼に1611年、当時の国王フェリペ3世から家康へ贈られた。家康の死後、久能山東照宮(静岡市)に納められ、国の重要文化財に指定されている。

 時計を調査した英国・大英博物館の学芸員が「貴重な品。修復して動かすより、レプリカを作製しては」と東照宮に提案。ロンドンにある、古時計の修復を手掛ける工房に勤務する腕利き職人、ヨハン・テン・ヒューブさん(30)を紹介した。

 17世紀以前に作られた西洋時計は王侯貴族の特注品であることが多く、部品の形もまちまち。作られた時代や場所で異なる構造を理解し、修復できる職人は世界に十数人しかいないとされる。

 ヒューブさんは、多くの時計職人が住んでいたオランダのフリースラント州ヤウレ村出身。父も貴重な古時計だけでなく、歯車で惑星の動きを再現する18世紀の太陽系儀の修理も手掛けた職人だ。

 10歳のころには父の旋盤で歯車を削っていた。家具作りの道を志したこともあったが「やはり時計が好き」(ヒューブさん)と20歳のときに父と同じ道へ。「古い時計に触れると、数百年前の製作者の思いが見えるような気がする」(同)。大学や博物館の所蔵品に触れて経験を積んできた。

 部品の摩耗を防ぐため作動させず保存しており、分解して採寸した設計図を基に制作したレプリカで当時の機能や動きを再現し、家康没後400年を迎える来年の完成、一般公開を目指す。「歴史的に価値が高い時計に触れられて光栄。ベルの音も再現したい」(ヒューブさん)。落ち着いた口調から自信が漂う。

 ◇房総沖のスペイン船遭難 江戸時代初期の1609(慶長14)年9月30日、フィリピン(当時スペイン領)からメキシコ(同)に向かうフィリピン臨時総督、ドン・ロドリゴらを乗せたスペイン船「サン・フランシスコ号」が台風のため岩和田沖で遭難、田尻海岸に漂着した。岩和田村住民の活躍で乗員373人中約300人が救出され、大多喜城主・本多忠朝から手厚い救援を受けた。一行は忠朝の取り計らいで、家康が用意した帰国用の船舶で無事帰国した。


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