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跡地に「ららぽーと」 温泉と船橋ヘルスセンター 【千葉地理学会連載 おもしろ半島ちばの地理再発見】

船橋ヘルスセンターを今に伝える碑
船橋ヘルスセンターを今に伝える碑

 船橋ヘルスセンターは、1952(昭和27)年に天然ガスを試掘した際に湧出した34度の温泉を利用して55年にオープンした総合レジャー施設です。園内には公衆浴場のほかにプール、演芸場、遊園地などの多くの施設があり大人気でした。

 「長生きしたけりゃちょっとおいで♪」のCMソングが当時よくテレビから流れていたものです。「船橋の海岸地域に温泉?」。その答えを得るためにまず温泉とは何かを確認しましょう。

 温泉法で温泉とは次の二つの条件のどちらかを満たすこととなっています。一つは泉温が25度以上あること。もう一つが指定された一定以上の物質を含んでいることです。その物質とは硫黄や水素イオン、ラジウムやラドンなど19種類あり、それぞれ含むべき量が規定されています。

 言い方を変えると、成分がほとんどなくても泉温が25度以上あれば温泉であり、泉温が低くても必要成分を一定量以上含んでいれば温泉と言うことができるのです。

 船橋ヘルスセンターでは、ナトリウムイオンや塩素イオンを多く含む塩化物強塩泉と分類される30度前後の源泉が数本掘削されていました。

 温泉の効き目には温熱、水圧、浮力、転地、薬理の効果があるとされています。これらのうち、温熱、水圧、浮力効果は家庭のお風呂でも一定程度得られます。その上にいつもと違う所での転地効果と成分吸収による薬理効果が加わるので、「やっぱり温泉はいいな」ということになるわけです。

 しかし、昭和30~40年代は温泉そのものの効果より、レジャーとしての楽しみにウエートが置かれていたと言えるかもしれません。それが年間400万人もの入場者があったことの理由の一つでしょう。

 ところが昭和40年代になると、東京湾岸の地下水等の大量くみ上げによる地盤沈下が問題となり、71(昭和46)年には採掘中止となります。そして77年に閉園となりました。習志野市にあった谷津遊園も82年には閉園となっています。国民の行楽に対するニーズが変わってきたこととも無縁ではないでしょう。ちなみにディズニーランドの開園は83年です。

 ヘルスセンター跡の広大な敷地には「ららぽーと」ができ、年間2200万人もの来場者を誇るわが国有数のショッピングセンターとなっています。

 ららぽーと駐車場の一角にひっそりと記念碑が立っています。それは57年に船橋ヘルスセンターが全国温泉コンクールベスト10に入選した時の記念碑です。今は、あのにぎわいを思い出させてくれるものはこの碑しかありません。

 今年8月、船橋市湊町にあった温泉旅館玉川が廃業し、登録文化財であった建物が取り壊されました。現在船橋市内に残る銭湯の中では、同じく湊町にある湊湯が昭和の風情をよく残しています。泉質分析をしていないので正式に温泉とは認められていませんが、塩分を多く含み湯冷めしにくい泉質です。船橋ヘルスセンターと似ている「温泉」を味わうことができます。

 (植草学園大・秀明大非常勤講師 鎌田正男)


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