2020夏季千葉県高等学校野球大会

消去跡に見苦しい落書き アートは我々の心の中に 印西にバンクシー?その後(前編)

「バンクシー作品?」と騒がれた猿人の落書きが消去された後、最近になって「消せよ役場」という落書きが上から書かれた=今月3日、印西市山田
「バンクシー作品?」と騒がれた猿人の落書きが消去された後、最近になって「消せよ役場」という落書きが上から書かれた=今月3日、印西市山田

 昨年、東京都内で見つかった屋外の落書きが正体不明の路上芸術家、バンクシーの作品かもしれないと注目されたことを受け、「これもバンクシーでは?」と話題になった印西市山田の双子公園の落書き。保管を決めた都の対応とは異なり、千葉県が消去の方針を示したことでも話題になった。あれから1年半。例の落書きとは全く異なる「単に見苦しい落書き」が書かれてしまい、今に至っている。この事象から、落書きとアートを巡る問題について改めて考えてみたい。(平口亜土)

 同公園の落書きが注目されたのは昨年2月。SNSなどで「バンクシーでは?」と話題になっていることを記事にすると、ネットで“バズ”り、他紙やテレビも報じた。結果、一時大勢の人が鑑賞に訪れる注目スポットになった。

 公衆トイレの外壁にあった落書きは猿人の絵で、銃のようなものを持って直立で歩行し、足元には子猿が描かれていた。当時1年以上前からあったようだ。

 昨年1月に東京都港区でバンクシーの作風に似たネズミの絵が防潮扉に見つかったことに端を発した騒動。印西の落書きが話題になったのは、九十九里町でもバンクシー作品に似た絵が見つかったため、「同じ県内なら…」と期待が高まったことが背景にある。

 ただ、真贋(しんがん)については見方が割れた。「バンクシーがこんな田舎に来るはずがない」と否定的な声が出る一方、絵の完成度の高さやバンクシーが猿をよくモチーフにすることを挙げ、「本当に来たのかも」と期待を膨らませる人もいた。

 バンクシーは公共物の落書きについて真作の証明はしておらず、真贋は闇の中だ。私自身、間近で見た感想は、微妙な濃淡も上手く表現され、作者が誰であってもよく出来た絵だと思った。猿人が武器を手にし、それを止めているように子猿を配置する構図は「戦争の愚」をテーマにしているのかもしれない。

 当時、公園を管理する千葉県印旛土木事務所に取材すると「一般的な落書きと同様に扱い、鑑定には出さない。時期を見て消す方針」と回答。「保管し、鑑定作業を進める」とした都とは対照的だった。

 公共物への落書きは犯罪であり、県は法的に当然の態度を示したと言える。一方、有名芸術家だから消去しない、という都の対応は、行政としては公平性の観点から疑問が残る。

【後編へ】→ 消去跡に見苦しい落書き アートは我々の心の中に 印西にバンクシー?その後(後編)


  • LINEで送る