新型コロナウイルス情報

支援は言葉より行動で 新型肺炎騒動、観光を直撃 帰国者受け入れた勝浦 【地方発ワイド】

ホテル滞在者が帰宅して初めての週末。朝市の客は少ない=15日、勝浦市
ホテル滞在者が帰宅して初めての週末。朝市の客は少ない=15日、勝浦市

 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)が拡大する中国湖北省武漢市から帰国した邦人177人が勝浦市のホテルで約2週間の経過観察期間を過ごし自宅に戻るなどした。地元は平静を取り戻しつつあるが、市内最大のホテルの休業は観光を直撃。観光シーズンを目前に客は激減している。関係者は、支援を表明している国や千葉県に対し「言葉より行動を」と迅速な対策を訴えている。

(勝浦支局長・廣田和広)

 武漢からのチャーター機第1便は1月29日に邦人206人を乗せて羽田空港に到着。肺炎の症状がなく宿泊を希望する191人が市内のホテルに同日夕に到着した。

 国から帰国者受け入れの「強いお願い」があったのは直前の28日。ホテル側は県と市の了解を得ることを条件に英断した。従業員を対象に説明会を開き、「人道的見地から頑張ろう」と団結。異例の一棟貸しとなった。

 一方、土屋元市長に連絡があったのは同夜8時すぎ。携帯電話に国から直接電話があったが、「知らない番号だったので」出なかった。結局、竹下正男副市長を通じて要請を受けた土屋市長は、県も承知していたことから異議は申し立てなかった。市幹部は打ち明ける。「受け入れを拒否していれば、ホテルは選ばれなかったのではないか」

◆市民の支え

 ホテルの部屋数は約170。滞在者全員には個室が割り当てられず、相部屋の調整が難航した。室内だけの生活に加え、洗濯や着替え、食事…と次々と課題が発生。その都度、国の職員らが要望を聞き取り改善を図った。

 滞在者のストレスを少しでも和らげようと、市民はホテル前の砂浜に竹灯籠をともし、中学生は直筆メッセージも届けた。取材に応じた滞在者は「不安が抑えられた」と振り返った。バスで帰宅する際は車窓から市民らに手を振って感謝を伝えた。

◆経済は打撃

 滞在者の受け入れにより「勝浦」のイメージアップにはつながった。だが、市内最大の部屋数を誇るホテルの休業は市経済に大打撃になった。400年超続く伝統の朝市の来客数は「平日は8割、休日も7割減った」と役員の塩田和彦さん(51)は頭を抱える。

 そもそも昨秋に相次いだ台風による風評被害で客足は落ち込んでおり、滞在者受け入れは追い打ちだ。国の担当者や森田健作知事は支援を表明しているものの、具体策は示されていない。塩田さんは「言葉より行動を」と国を挙げた情報発信を求める。

 勝浦中央商店街も買い物客はまばら。商店会の小原俊浩会長(55)は「市民に新型肺炎の感染者は出なかった。人気アイドルなどが市を訪れ、安心な街だと盛り上げてもらえれば」と提案する。

 市内では22日に「ビッグひな祭り」が開幕し、観光シーズンの到来を告げる。準備は進むが、ホテルは2月いっぱい休業で例年の活気はいまだ感じられない。突然の“国難”を温かな気持ちでバックアップした市民たちの苦労は報われなければならない。


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