枕のような形のウニ タコノマクラ 【海の紳士録】

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 ウニというと、長いトゲで被われた球形の殻を持つ、イガグリのような形を思い浮かべるのが普通である。しかし、ウニの仲間の全てがこのような姿をしているわけではない。タコノマクラは、そんなウニらしくないウニの代表である。

 タコノマクラはちょうど亀の子タワシを押しつぶしたような形をしており、殻の表面をびっしりと被う棘はごく短く、ザラザラとした手触りである。上面には5枚の花びらのような模様があり、一つだけは先端が開いている。こちらが体の前方で、普通のウニとは違って体は左右相称である。形は違ってもウニの仲間であるため吸盤のある管足を持ち、水槽の垂直なガラス壁をはい上がることもできる。

 「蛸の枕」とは言い得て妙な名前である。もちろん、実際に海中でタコが枕にするわけではないが、その大きさといい形といい、確かにタコが枕として使うのにちょうど良さそうだ。ところが意外なことに、この「タコノマクラ」という名前は、江戸時代には現在のヒトデやクモヒトデの仲間を指す言葉であったらしい。明治時代の生物学者が、中等教育の教科書の中で現在のタコノマクラにこの名前を当ててから、この呼び方が普及・定着したのだといわれている。

 南日本に広く分布し、房総でも潮間帯から潮下帯で普通にみられる。死んで白くなった殻は、5枚の花びら模様が浮き出てなかなかきれいである。水洗いして乾燥させると、良い飾りものになる。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 立川浩之)