見かけは悪いが磯の珍味 カモガシラノリ 【海の紳士録】

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 南房総の所々で「いそもち」という名で食べられている海藻がある。この海藻は、せいぜい三センチくらいの大きさで、潮の引いた磯の岩上にへばりつくように生えていて、黒っぽい色をしているが、実は赤い色素を持った紅藻の仲間である。その名を「カモガシラノリ」という。

 海藻の観察会をすると参加者から名前の由来を聞かれることがある。「鴨の頭」という意味かもしれないが、由来が書かれた書物を見たことがないので、定かではないし、カモガシラノリを見ても鴨の頭を想像できない。どなたかおわかりになる方がいらっしゃれば教えていただきたいところである。

 カモガシラノリは、見かけはあまりパッとしないが、湯通しするとヌルヌル感が増して、お味噌汁などで食すると食感が良く、とてもおいしい。海の博物館のある勝浦でも、地元の人は、昔からこの海藻を「もち」「いそもち」「いしもち(いそもちが訛った?)」などと呼んで、食べているようである。あまりたくさん採れるものではなく、夏になると枯れてなくなってしまうので、春先の短期間に磯で採れる珍味といったところだろう。

 今年は冬が暖かかったせいか、海の博物館前の磯では、この海藻がこの十年間でも、最も少ないように感じる。短絡的に温暖化の影響とは言えないと思うが、磯の珍味が食べられなくなるようなことがないように願うばかりである。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 菊地則雄)