「かいそう」の原料 コトジツノマタ 【海の紳士録】

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 千葉県銚子から九十九里地方を中心として、正月に「かいそう」とか「海藻こんにゃく」とか呼ばれるものを食べる習慣が残されている。「かいそう」の原料になるのは紅藻類のツノマタ属に属するコトジツノマタやイボツノマタという海藻である。コトジツノマタは「本海草」、イボツノマタは「新海草」という名で乾燥品が売られている。

 これらを水に戻し、それを煮て、固めたものが「かいそう」である。正月に、味の濃いお節料理ばかりでなく、さっぱりとした「かいそう」を食べて、お腹のこなれを良くするという習慣らしい。また、小正月に行われる御歩射(おびしゃ)祭りに使われる地域もあるそうだ。

 コトジツノマタは太平洋沿岸の波当たりの強い岩礁の低潮線付近に生え、高さ25センチほどになる。千葉県内でコトジツノマタが採取されるのは銚子付近と勝浦から鴨川にかけての地域である。海の博物館近くの勝浦市鵜原地区でも5月頃の潮の良く引く大潮前後に、漁師さんが採集したコトジツノマタを干しているのを見かけることがある。

 勝浦ではコトジツノマタを「ながまた」と呼んでいる。「ことじ」とは「琴柱」のことで、琴の胴の上で、弦を支える部分である。枝の先端が二股に分かれた形が似ているからであろう。ちなみに「つのまた」は「角股」の意味である。「ながまた」は、おそらく体が細く長く、先端が二股であるためにそう呼ばれているのであろう。

 (千葉県立中央博物館分館海の博物館菊地則雄)