紙のように薄い動物 クロスジニセツノヒラムシ 【海の紳士録】

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 ウニやヒトデ、カニなどは、たとえ本物を見たことがない人でも磯で見つけたときにはひと目でそれとわかる。しかし、磯に暮らす無脊椎動物には、グループ単位で一般に知られていない動物が多い。

 ヒラムシはそのような動物のひとつ。潮だまりの石をめくるとその裏に付いていることが多く、磯の観察会では毎回名前を聞かれる。その名のとおり、ヒラムシの体は紙のように薄い。ところが、腹側にはれっきとした口が開いているし、のどの部分などは透けて見える。よく動くので誰もが動物ということはわかるのだが、何の仲間であるかは想像しづらいようである。教育に関わる人ならば、実験動物のプラナリアに近い動物と言われれば、平らで軟らかい体からしてすぐに納得できるものだが、それが通用しない人には「寄生虫であるサナダムシの親戚」と紹介するしかない。ヒラムシもプラナリアもサナダムシも「扁形動物門」という分類群に含まれるためである。

 ヒラムシの仲間にはサンゴ礁域に暮らす美しい種類も多く、そのほとんどは「ニセツノヒラムシ科」に属する。千葉県の海にもこのグループのヒラムシが何種類かおり、クロスジニセツノヒラムシがその代表種と言える。本種は、南房総の潮間帯から水深10メートルにかけての浅海で見られ、長いものでは体長6センチをこえる。白と黒のストライプ模様も相まってよく目立ち、体の縁を波打たせながら動く姿は、なかなかユーモラスである。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 奥野淳兒)