東京湾深海の「悪魔のサメ」 ミツクリザメ 【海の紳士録】

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 東京湾は、大都市に囲まれた海で、首都圏に通ずる海上交通の要となっている。湾奥部は遠浅の海で、かつては広大な干潟が見られたが、工業地帯の進出によって現在ではその大半が埋め立てられてしまった。一方、富津岬より南では湾央部が谷状になり、東京湾の出口付近では水深800メートルを超えている。そこは、東京海底谷と呼ばれている。

 南房総の内房地域では、東京海底谷の縁にあたる水深200メートル付近の深海に刺網を仕掛けて、高級食材のアカザエビを獲る漁が行われている。その網には、時として珍しい深海生物がかかることがある。

 ミツクリザメは世界中の深い海に生息していることが知られているが、滅多に見られない幻のサメであった。ところが最近の調査によると、このミツクリザメが東京湾の深海に仕掛けられる刺網に時々かかることがわかった。

 ミツクリザメの鼻面は板状に長く伸び、そこには微弱な電流を捉える特別な感覚器が多数並んでいる。これは、海底でエサを探すのに都合が良いらしい。また、エサを捕まえる時には口を大きく前へ突き出すことができ、なんとも奇妙な顔つきになる。そのような容貌のためか、英名ではゴブリンシャーク(悪魔のサメ)と呼ばれている。

 海の博物館では、収蔵資料展「サメ|とっておきの7つのトリビア」を9月26日まで開催している。その中では、ミツクリザメが口を大きく開いた状態の標本を展示している。この機会にぜひご覧いただきたい。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 川瀬裕司)