「超歌舞伎」なぜ千葉で? アウトローがつなぐ歴史

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生身の中村獅童さん(左)と映像の初音ミクが共演した超歌舞伎「積思花顔競」=千葉市美浜区の幕張メッセ
生身の中村獅童さん(左)と映像の初音ミクが共演した超歌舞伎「積思花顔競」=千葉市美浜区の幕張メッセ
幕切れでは観客だけでなく獅童さんもペンライトを振り、まるで音楽ライブのような熱狂に包まれた
幕切れでは観客だけでなく獅童さんもペンライトを振り、まるで音楽ライブのような熱狂に包まれた

 4月28、29日、幕張メッセ(千葉市美浜区)を会場に過去最多の約16万人を集めた大型イベント「ニコニコ超会議2018」。アニメやゲームから音楽祭や仏教法要まで、多彩な文化が雑多に展開された中、最も広いイベントホールを沸かせたのが「超歌舞伎」だ。

 2016年の超会議からメインイベントとして上演されてきた超歌舞伎は、歌舞伎俳優の中村獅童さんが主役を務め、最新のデジタル技術を駆使し、映像で投影された人工のキャラクター・初音ミクと舞台上で共演するのが見どころだ。

 3回目の今年は新作『積思花顔競(つもるおもいはなのかおみせ)』を上演。歌舞伎舞踊の大曲『積恋雪関扉』を基に、獅童さんと初音ミクがセリフを受け渡したり、大立ち回りを繰り広げたりと、アナログとデジタルの垣根を超えた舞台で観客を大いに魅了した。
 
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 では、なぜ超歌舞伎は初演以来、千葉で上演されているのだろうか。現実的な答えは「主催者が幕張メッセを会場に選んでいるから」。しかし、歌舞伎を軸に東京と千葉の関係性を振り返ると、少し違った歴史が見えてくる。

 歌舞伎が生まれた江戸時代から、江戸の町と今でいう千葉県は密接な関係にあった。行徳の塩や利根川流域のしょうゆをはじめ、コメや野菜など生活に欠かせない物資が江戸に運ばれた。物資の活発な交流は人的交流を生み、文化の交流にもつながる。

 歌舞伎では、市川団十郎家と成田山の関わりを筆頭に、千葉ゆかりの多様な登場人物が台本を彩る。『切られ与三』の与三郎は放蕩(ほうとう)ゆえ木更津に退き、『髪結新三』の新三は「上総無宿の入墨新三だ」とたんかを切る。『十六夜清心』の盗賊・鬼薊清吉は行徳生まれで、『刺青奇偶』の博徒・半太郎は江戸にいられず行徳に潜む。

 もちろん市川家が得意とする荒事のヒーローもいるが、私見では歌舞伎における千葉ゆかりの人物は放蕩者・入墨者・盗賊・博徒など、アウトロー(あぶれ者)として描かれる印象が強い。「千葉はヤンキーが多い」という現代の通俗的な認識にも通じるかのようだ。

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 現代においても、千葉の農水産物は東京という巨大市場に供給され、千葉は江戸時代と変わらず東京の繁栄を陰で支える「経済的後背地」の役割を担っている。

 一方、千葉を「文化的後背地」として見れば、歌舞伎の世界に対してアウトロー的な着想を与えるのが一つの役割といえるだろう。

 古典演目を伝統芸能としてきちんと上演する専用劇場の東京・歌舞伎座に対する、最新技術を使った新作演目をエンターテインメントとして、まるで音楽ライブのように上演する幕張・超歌舞伎。

 こうしたアウトロー的な立ち位置の超歌舞伎は、歴史的にアウトローを輩出してきた千葉でこそ上演されるにふさわしいと言えるのではないか。

(中島悠平)