課題は見学環境の整備 チバニアンのこれから 【千葉地理学会連載 おもしろ半島ちばの地理再発見】

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シャトルバスの利用状況
シャトルバスの利用状況
河原へ下る急坂
河原へ下る急坂

 昨年11月に市原市田淵の養老川沿いに見られる地層が「チバニアン」となる見通しとなりました(11月22日付本欄でも紹介)。

 このことがテレビや新聞で大きく取り上げられ、昨年6月の申請以来、注目を浴び始めていた現地の状況が大きく変わっています。特に見学者が急増し、平日でも2~300人、休日にはその倍もの見学者が集まるようになりました。そしてそれに伴い、課題がいくつも持ち上がりました。

 まず、もともと現地は観光地ではなく、駐車場やトイレなどの設備がありませんでした。そこで市原市では、小湊鉄道月崎駅と旧南部老人福祉センターに臨時駐車場を設け、休日にはそこと現地を結ぶ無料のシャトルバスの運行を始めました。当初12月末までの予定でしたが、1月末まで延長運転しました。

 その後は現地入口に臨時駐車場を整備することになり、バスの運転は終了しました。バス運行以降設置された仮設トイレは現地入口のみ引き続き設置される予定です。

 地層の見える場所は養老川の川床まで急坂を下りていかなければなりません。特に急な場所には地元の方々が手作りの手すりを設けてくれました。また、河原は滑りやすいために、市が滑り止めに砂を入れて歩きやすくしましたが、これはその後の川の増水によってかなり流されてしまいました。

 さらに、地磁気逆転により地質時代の境界に認定される見込みの77万年前の火山灰層を間近に見るためには、急な崖を少し登らなくてはなりません。そこが危険なため一時期立入禁止になっていましたが、現在は新たに石の階段が設置されました。

 これまで研究者や興味のある人しか入らなかった場所に見学者を多く迎え入れるためとは言え、自然の河原や崖に人工物を設けることは課題もあるのではないでしょうか。

 見学に訪れた人にとっては、露頭や地磁気逆転の分かりやすい説明が必要です。そこで市はパンフレットを1万部作成し、現地入口に置きました。しかし短期間でなくなってしまい、新たに5万部印刷しました。市が制作した見学者用の動画も見られるようになっています。

 私自身もこれまで多くの人を現地へ案内しています。そこで受けた質問には「方位磁針を持っていったら針が逆を指しますか」「次の逆転はいつ頃起きるのですか」「地球の歴史で教科書が変わるのですか」「この場所はいつごろ誰が発見したのですか」などが多かったです。今後は現地にも、場所を十分に考えた上で解説板を設けることも必要でしょう。

 現場の保存とさらなる研究のために、市は国の天然記念物への申請を1月末にしました。また現地付近は民有地が入り組んでおり問題も起こっているので、それらを買い取る計画も立てています。

 以上のような問題や動きは、2年前に近くの小櫃川上流で起きた「濃溝の滝」の観光地化とダブるところが多くあります。将来の見通しをもって対策を講じていくことが重要です。

 現地へのアクセスで利用できるのが、国の登録文化財であり、グットデザイン賞も受賞した小湊鉄道です。その利用と合わせて地域への訪問者を増やし、里山の良さを感じてもらいながら地域活性化を図る道を、関係機関や住民が連携しながら考えていく必要があるのではないでしょうか。

(秀明大・敬愛大非常勤講師 鎌田正男)