花咲く頃、新市長は 桜守った市民の声 市川 【回顧2017年 取材メモから】

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市民の声を聞き入れた市の英断により、伐採を免れ、来年の春も花を咲かせる姿が見られることになった里見公園分園の桜=4月、市川市国府台

 桜の名所として知られる市川市国府台の里見公園分園に、テニスコート新設計画があり、桜が伐採される、との一報が耳に入ったのは、ちょうど桜が咲き始める3月下旬だった。市長の知事選出馬に伴い、知事選と同日に急きょ実施された浦安市長選の対応に追われていた時期でもある。

 選挙取材もひと段落した4月初旬、問題の現場に足を運んだ。そこで目にしたのは、長い時をかけて成長しただろう見事な枝ぶりの桜。約4千平方メートルの公園を覆うように長く伸びた枝は、ちょうど満開を迎えた花で覆われ、青空の下の公園にドーム型の天井を作っていた。「この木を切ってしまうのはもったいない」と、率直に思った。

 取材を進めると、2面分のテニスコートを造るため、桜を含む約50本の木を伐採する計画が判明。従来からある市スポーツセンター(市川市国府台)の9面を廃止するのに伴い、市は7月に開園した北市川運動公園(同市柏井町)に12面を整備する一方、「国府台地区にもテニス環境を残す」として分園への整備計画を決め、本年度当初予算に盛り込んでいた。

 しかし、計画は市から直接、住民に知らされないまま、3月下旬に表面化し、住民の反発を招いた。4月6日付の紙面で問題を取り上げた記事を掲載した。

 「貴重な桜の木を伐採してまで、テニスコートを造るのはおかしい」-。計画に反対する住民や市民団体から多くの意見が市に寄せられた。桜の木にも、伐採の危機を告げるプラカードがくくりつけられた。

 市は年度内の完成を目指していたが、反発を受け、大久保博市長が5月、計画の保留を決定。その大久保市長が8月、今期限りで引退する意向を表明し、「保留」としていた計画の行方が注目される中、10月の定例会見で、隣接する大学との土地交換により用地確保の見通しが立ったとして、正式にテニスコート計画の撤回を発表した。

 市民が声を上げなければ、桜は伐採されていただろう。一方で、議会の議決まで得た事業を中止することは、市側にとっても苦渋の決断だったと思う。市民の声に真摯(しんし)に耳を傾け、桜を残した判断は英断だったと評価したい。

 新市長を選ぶ市長選は、5人が乱立の上、いずれも法定得票数に満たず、再選挙に。異議申し出により、再選挙の日程が決まらない異例続きの展開となった。来年の春、里見公園分園の桜が咲く頃には、新しい市政の舵(かじ)取り役が決まっていることを切に願う。

(市川支局 篠塚紀子)