里山の中の贅沢な空間 DIC川村記念美術館 【シリーズちば旅・アート散歩編】

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里山の中にあるDIC川村記念美術館
トゥオンブリー・ルーム
クロード・モネ 《睡蓮》1907年

 世界的な名作映画「ベニスに死す」(1971年)の撮影において、巨匠ルキーノ・ビスコンティ監督はベニスの実在するホテルを借り、内装をすっかり作り変えてしまったという。トーマス・マンの原作小説の世界に近づけるために。何とも贅沢(ぜいたく)な逸話だが、そうした“舞台装置”へのこだわり、目配りが映画の中のドラマを一層輝かせるのだろう。

 先日、佐倉市の里山の中にある「DIC川村記念美術館」を久々に訪れた際、美術の展示においても舞台づくりが大切であることを意識させられた。同館は90年にDIC(当時は大日本インキ)が開館。国内外の豊富な美術コレクションと広大な庭園を有する。現在の所蔵作品数は約千点。レンブラント作の肖像画、モネの「睡蓮」、ルノワールの「水浴する女」など世界的芸術家の作品がずらり。戦後アメリカ美術のコレクションも充実している。なかでも目玉展示の一つが戦後アメリカ美術を代表する画家マーク・ロスコの「シーグラム壁画」で、その舞台づくりが圧巻だった。

 同作はロスコが晩年に手掛けた抽象画30点の連作で、同館はこのうちの7点を所蔵。開館当初から展示しているが、2008年に建物を増改築し新たな「ロスコ・ルーム」を設けた。展示室の壁を七角形に設計し1区画に1作品を並べている。赤茶とオレンジ、黒の各色を基調とした大作7点が展示空間をぐるりと取り囲むその「舞台」は迫力たっぷりだ。

 ロスコ・ルームの真上に開設されているのが「トゥオンブリー・ルーム」。白色の広い空間にアメリカの芸術家サイ・トゥオンブリーの彫刻と絵画計2点のみを展示するという贅沢さ。エレガントでゆったりとした空間が作品をより輝かせる。展示室のガラス窓からは自然光が入り、庭の樹木も目に入る設計。時間や季節、天候によって展示空間の雰囲気が変化する。里山の中の美術館という特性を生かしている。

 庭園は入館料を払えばもちろんのこと、庭園利用のみでも1回200円(大学生以上)で散策できる。サクラ、ツツジ、アジサイ、オオガハスなど季節ごとにさまざまな花が咲き誇り、白鳥、ガチョウなどが遊ぶ大きな池や「睡蓮」の絵を模した池など水辺空間としても楽しめる。今は紅葉が見頃。

◆侍の姿が浮かぶ町

 DIC川村記念美術館で展覧会「フェリーチェ・ベアトの写真人物・風景と日本の洋画」が開かれている(12月3日まで)。幕末から明治期に掛けて日本に滞在した写真家フェリーチェ・ベアトが撮影した人物・風景写真約180点と、日本の洋画草創期の作品18点を紹介。当時の人々の生活様式などがうかがえる。

 お膝元の佐倉は城下町として栄え、江戸期の史跡が点在。ベアトの写真を記憶に残しつつ、JR佐倉駅から少し歩いてみた。坂道を上がり15分ほどで武家屋敷が並ぶ通りに。3棟を一般公開している。さらに奥に行くと「サムライの古径」なる案内表示が。竹林に囲まれた坂道は江戸時代の姿を残すという。侍とすれ違ったらどうしよう。

 (文化部・日暮耕一)

◆紹介メモ DIC川村記念美術館

(場所)佐倉市坂戸631
(時間)9時30分~17時(入場は16時30分まで)
(休館)月曜日(祝日の場合は開館し翌平日に休館)、年末年始、展示替え期間の臨時休館
(料金)一般千円~、大学生・65歳以上800円~、小・中・高校生600円~(料金は展示内容によって変わる)
(交通)京成佐倉駅とJR佐倉駅から無料送迎バスあり、無料駐車場あり(300台)
(問)ハローダイヤル050(5541)8600