姿も動きもユーモラス マガキガイ 【海の紳士録】

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 マガキガイは殻の高さ6センチくらいの巻貝である。殻は円錐をさかさまにしたような形で、殻口は細長い。一見、イモガイの仲間に似ているが、ソデボラ科という全く違うグループに含まれる。房総半島以南の西部太平洋に広く分布し、潮間帯や浅い海に住む。名前は似ているが、二枚貝のマガキとは全く別の種類である。

 マガキガイは長い柄(え)のある発達した眼を持つ。まるで絵に描いたような目玉模様がユーモラスである。マガキガイの殻は、殻口の下端が溝になっており、外側の縁は一部がめくれ上がったようにへこんでいる。この溝やへこみがあるため、殻の中に身を潜めたまま眼だけを殻の外に伸ばすことができる。長い眼でまわりを警戒しながら、象の鼻のような吻(ふん)を伸ばしてまわりの海底を探り、吻の中にある歯舌で付着物などをかじりとって食べる。吻をゆっくりと左右に動かす姿は、まるで海底に掃除機をかけているようである。

 マガキガイは、「歩き方」もなかなかユニークである。多くの巻貝は広い腹足の裏を海底に密着させ、滑るように這(は)って移動する。しかし、マガキガイの腹足は幅が狭く、足の裏で這うことはできない。マガキガイは、腹足を伸び縮みさせ、縁にギザギザのある蓋を海底に引っかけながら、まるで千鳥足のように海底を一歩ずつ歩き回るのである。

 分布の北限にあたる房総半島ではあまり数は多くないが、多産する地方では食用にされる。おいしい貝である。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 立川浩之)