初の事故に関係者衝撃 名物の遊覧船、姿消す 香取・小野川 船頭死亡 【地方発ワイド】

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事故があった「中橋」。ほかの橋よりも水面に近く造られている=香取市佐原イ
事故があった「中橋」。ほかの橋よりも水面に近く造られている=香取市佐原イ
運行自粛で小野川に並ぶ遊覧観光船。事故当日は天候が悪かったため屋根付きの船が使われた
運行自粛で小野川に並ぶ遊覧観光船。事故当日は天候が悪かったため屋根付きの船が使われた

 香取市佐原の小野川で今月11日、遊覧観光船を操る男性船頭が橋の主桁(しゅげた)と船の屋根に頭をはさまれ死亡した。2003年の運航開始以来、初の死亡事故となり、関係者や観光客に衝撃が広がっている。事業者「ぶれきめら」は現在、船の営業を中止しており、再開時期は未定。古い町並みを川面からゆったりと眺められる“名物”が姿を消し、今後の観光への影響が懸念される。

(香取支局 塚越渉)

 「普段より水位が高く、水の流れも速かった」。事故当日、小野川のそばで作業していた男性(74)は、そう証言した。事業者は天候が悪かったため、屋根付き船を使用。現場の「中橋」は、ほかの橋より水面近くに造られており、通過するにはしゃがむ必要があったが、死亡した70代の船頭は何らかの理由で橋の下で立ち上がったとみられる。

◆観光客減を危惧

 “小江戸”と呼ばれる佐原の歴史的な町並みは、市の観光の要だ。県の観光入込調査報告書によると、15年は「小野川沿い」を52万人が観光した。昨年12月に「佐原の山車行事」が県内で初めてユネスコ無形文化遺産に登録され、県外や海外からの訪問者も増えている。

 観光スポットとしての勢いを増していただけに、今回の事故の影響を危惧する声も出ている。ぶれきめら設立時に300万円を出資した市は「遊覧船は町をにぎわせ、観光客に喜ばれていた。事故は大きい痛手」(商工観光課)。水郷佐原観光協会は「旅行プランの中に遊覧船観光が組み込まれている。観光の目玉が中止になり、来訪者が減少する可能性はある」とする。

◆船なく「寂しい」

 一方、小野川沿いに店を構える70代の女性は「事故現場に居合わせた人たちはショックを受けたと思う。佐原に悪い印象を持たれてしまったら悲しい」と話す。

 事故発生以降に佐原を訪れた川崎市の渡辺哲也さん(33)は「水郷に船がないのは寂しいですね」と複雑な表情だった。

◆安全確信までは

 ぶれきめらの斎藤謙二事業部長(60)は、千葉日報社の取材に「亡くなった方の遺族や地域の方々に迷惑を掛け申し訳ない」と陳謝。「安全な運航ができると確信するまで再開はできない。一から考え直していきたい」と話した。

 生前の船頭について、周囲は「困っている人を助けてくれる気概を持った人」「明るくて人気者だった」と口をそろえた。地元の囃子(はやし)連のメンバーも務め、今月4~6日に茨城県であった潮来祇園祭禮にも参加していた。

 船頭の知人の男性は「疲れがたまっていたと聞いていた」と残念がった。