もしかして新種? アカシマモエビ 【海の紳士録】

  • LINEで送る

 大潮で潮がよくひくと、普段は海の底である部分が干出する。このような時には歩いて観察できる範囲が広がり、見られる生物の種類も多くなる。アカシマモエビというエビがダイビングをすることなく見られるのはそのような時である。このエビは、その名のとおり赤い縦縞が体を走っているのが特徴であり、体が細長く、触角や脚も細いので全体的に優雅な印象を受ける。

 このエビは、日本の暖温帯域からインド・西太平洋の熱帯域にかけて広く分布している種類と考えられていた。しかし、熱帯アジアから報告された本種の色彩は、今回示した日本のものとは大きく異なる。アカシマモエビを含むヒゲナガモエビ属において、エビの仲間にも精巣と卵巣を同時に発達させる「同時的雌雄同体」という現象が見られることが初めて確認された。

 そのように興味深いグループだからであろうか、ここ10年の間にこの属の分類学的、遺伝学的研究も急速に発展し、多くの新種が発見された。これらの中には、形態はよく似ているものの色彩は明らかに異なり、精査の結果別種として扱われたケースが多い。この事例をわが国温帯域のアカシマモエビに当てはめてみると、色彩の上では熱帯の種類とは別種とするほうがしっくりくるのである。

 今後、温帯域と熱帯域のアカシマモエビについて、顕微鏡下で形態的特徴を詳細に比較したり、分子生物学的手法を使って遺伝的な関係を調べていくと、両者の間に色彩以外にも違いが見出せるのではないかと考えている。

 そうなった場合、動物に学名を命名する国際的な取り決めに従うと、千葉県の海に普通に分布するエビが新種ということになるのである。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 奥野淳兒)