南からの新顔? キッコウグサ 【海の紳士録】

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 房総半島南部は黒潮の影響を受け、造礁サンゴなど南の海に分布の中心がある南方系の生きものの、分布の北限海域になっている場合が多い。海藻にも、千葉県が分布の北限という種類がかなりたくさんある。千葉県の中でも最も黒潮の影響を強く受ける館山市付近は、40種ほどの海藻の分布の北限域と考えられている。ここでは、そのうち、2002年に南房総市富浦町の大房岬で生育が確認された緑藻のキッコウグサを紹介しよう。

 キッコウグサは世界中の暖かい海に生育する海藻で、日本では南西諸島から日本海側の南部まで、また、太平洋側は千葉県南部まで分布が知られている。今のところ、太平洋側では、大房岬の南岸が分布の北限と考えられている。

 体は緑色で、球形から長楕円形であり、直径が3センチくらいになる。細胞が肉眼でも区別がつくくらいの大きさで、表面から見ると亀の甲羅の模様のように見えるので、この名がある。大房岬では、潮間帯の真ん中あたりの、ちょうどヒジキが生えるあたりに、1個体が点在、もしくは数個~数十個体が群生していた。

 最近、温暖化の影響か、地元勝浦の漁師さんたちから、これまで見たことのない南の生きものがとれるという話を聞くことがある。大房岬のキッコウグサは南から分布を拡大してきたのか、それとも単にこれまで確認されなかっただけなのか、興味深いことである。 (千葉県立中央博物館分館海の博物館菊地則雄)